本研究の目的は、腫瘍抗原がheterogeneityの大腸腫瘍を自然発症するApcMin/+マウスを用い、多発する大腸腫瘍を、新たに開発したがん新生血管内皮細胞に対する光免疫療法(NIR-PIT)で治療できるか確認することである。また、血管内皮に存在するVEGFR-2を標的した光感受性抗体化合物をマウスに投与した後に、大腸腫瘍を経肛門内視鏡下で光イメージングできるかについても検討した。 ApcMin/+マウスに腸炎を惹起するデキストラン硫酸ナトリウム(DSS)を内服させると、経過とともに多発大腸腫瘍を発症するようになることを確認した。マウス肛門より挿入可能な内視鏡を用意し、内視鏡観察下でも大腸腫瘍を確認することに成功した。そのマウスにVEGFR-2標的光感受性抗体化合物(DC101-IR700)を静注し、その翌日に内視鏡で蛍光プローブIR700の蛍光を確認したところ、大腸腫瘍に一致して蛍光を観察できることが確認された。さらに、多発大腸腫瘍を発症したマウスに、IR700を励起する近赤外光(NIR)を照射するファイバーディフューザーを経肛門的に挿入し、肛門から1㎝の範囲の大腸にNIRを照射することで治療した。治療効果得られるNIRの光量を導き出すことに成功し、①無治療コントロール群、②DC101-IR700投与群、③NIR照射群、④PIT群 (DC101-IR700+NIR照射)に分けて治療した。各群それぞれ7匹ずつ治療し、④PIT群において有意に良好な治療成績が得られたことが確認された。 PIT治療を行った後のマウス大腸を摘出し、標本にしてH.E.染色にて観察すると、治療により癌細胞は消失し、炎症細胞の浸潤を認めた。また管腔側の血管はフィブリノイド壊死を起こしていることが判明した。一方、CD34抗体にて血管内皮を染色すると、光の照射が弱くなる漿膜側の血管は残存していた。
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