研究課題/領域番号 |
20K22831
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研究機関 | 群馬大学 |
研究代表者 |
中澤 信博 群馬大学, 医学部附属病院, 助教 (60881290)
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研究期間 (年度) |
2020-09-11 – 2022-03-31
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キーワード | コネキシン26(Cx26) / β-catenin / Wnt/βcatenin / 核内移行 / 上皮間葉転換(EMT) / 腸型・混合型胃癌 / びまん型胃癌 |
研究実績の概要 |
本研究では胃癌における細胞間接着分子、特にコネキシン26(Cx26)に注目し検討を行っている。現在までの研究成果として、胃癌症例において、本来細胞膜でギャップ結合を形成するCx26は細胞質に染色され、癌化に伴い局在の変化を認めた。また腸型・混合型胃癌において、Cx26発現症例では有意に予後良好に対し、びまん型胃癌ではこの差を認めなかった。上皮間葉転換(EMT)誘導、がん幹細胞性に関連することが報告されているWnt/β-catenin経路とCx26の関係に着目し諸検討を行うこととし、昨年度以下の研究を遂行した。 ・細胞質のCx26とβ-cateninの関係を検討 In situ Proximity Ligation Assay(PLA)で検討を行ったところ、細胞質Cx26とβ-cateninの結合所見を認めた。またMKN7、MKN74、MKN45を使用し共免疫沈降(Co-IP)を施行したところ、Co-IPでも細胞質Cx26とβ-cateninの結合所見を認めた。細胞質Cx26はβ-cateninと結合することでβ-cateninの核内移行を抑制している可能性が示された。胃癌症例でβ-cateninの免疫染色を追加検討したところ、腸型・混合型胃癌において、Cx26低発現と核内β-catenin高発現は統計学的有意差を認め、臨床検体においても同様の結果が得られた。 ・上記詳細検討のため、MKN7、MKN74、MKN45、GCIYを使用しCx26強制発現細胞株を樹立し、いずれの細胞株においてもCx26高発現はWST-assayにて増殖能の低下を認め、核分画のβ-catenin発現は低発現となった(Western blotting)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在までの進捗状況は、概ね予定通りに研究遂行ができている。現在は細胞質Cx26高発現が、腸型・混合型胃癌では有意に予後良好になるのに対し、びまん型胃癌ではこの差が生じなかった理由について、Wntシグナルの差異に着目しながら検討を深めている。
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今後の研究の推進方策 |
・Cx発現抑制によるWnt/β-catenin経路に関する解析と、腫瘍増殖、進展に関する影響の検討 Cx過剰発現を誘導したCx過剰発現胃癌細胞株の両者の検討において、それぞれ網羅的遺伝子発現解析を行い新規下流遺伝子の探索研究を行う。
・Cxが胃癌の新規治療標的となりうるかの解析と、マウスモデルを用いた治療開発への応用 Cxはプロテアソームで分解される。In vivoではマウスxenograftモデルを用いての機能解析と、プロテアソーム阻害剤、β-catenin阻害剤の感受性とCx26の関連を調べ、さらに制癌剤感受性の検討を行い、細胞間結合を通した腫瘍組織全体への薬剤感受性亢進または薬剤耐性獲得に関する知見が得られればCxをターゲットとした革新的治療開発へと発展させることが可能であると考える。
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次年度使用額が生じた理由 |
必要物品に関しては備蓄もあり、まずはそれを消費したため使用額に差異が生じた。また実験計画上、より金額を使用する動物実験について、次年度以降に施行する方針となり、やや実験計画に遅れが生じたのも一因と考えている。
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