研究課題
正常細胞では中心体数が2つに厳密に制御されるが、癌細胞では中心体が2つより多い過剰な中心体の存在が知られ、これは癌細胞のhallmarkの1つである。細胞分裂の際に過剰中心体が二極に収束することで癌細胞は正常な二極性細胞分裂が可能となるが、申請者らはこれまでにサイクリン依存性キナーゼ2(CDK2)の阻害により、過剰中心体収束が阻害され、癌細胞が多極性細胞分裂を余儀なくされアポトーシスに至るanaphase catastropheが誘導されることを報告している(Kawakami M et al. J Natl Cancer Inst.2017; Kawakami M et al. Mol Cancer Ther.2018)。本研究では、同機序の臨床への適用を目指し、CDK2特異性が高い次世代CDK2阻害薬であるCYC065を用い、肺癌での抗癌活性を検討する。マウス及びヒト肺癌細胞株、コントロールとしてマウス肺胞上皮細胞(C10)とヒト気道上皮細胞(BEAS-2B)を用い、各種アッセイにて、CYC065の肺癌細胞における細胞増殖抑制、アポトーシス誘導、細胞周期停止、また、細胞遊走能・浸潤能抑制を示した。続いて、Hoechst染色によりDNA(染色体)を、また、紡錘糸(α-tubulin)、中心体(中心体マーカーとしてγ-tubulin)をそれぞれ蛍光染色し、CYC065によるanaphase catastrophe誘導を確認した。これらのin vitroでの結果を複数の肺癌マウスモデル(肺癌トランスジェニックマウスや、肺癌患者由来のpatient derived xenograftモデル)を用い、in vivoでも検証した。肺癌マウスモデルにCYC065を経口投与すると、トランスジェニックマウスでの肺癌形成、及び、xenograftモデルで皮下に接種した肺癌細胞による腫瘍増大が有意に抑制された。さらにこれらのマウスから摘出した腫瘍のリン酸化ヒストンH3を免疫染色し、in vivoでのCYC065による多極性細胞分裂の誘導を確認した。
すべて 2021
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Mol Cancer Ther
巻: 20 ページ: 477-489
10.1158/1535-7163.MCT-19-0987.