一細胞トランスクリプトーム、空間トランスクリプトームのデータに基づき細胞間の相互作用解析を網羅的に行うための計算機的手法DeepCOLORの開発を行った。本解析手法では、深層生成モデルに基づき一細胞トランスクリプトームの観測過程で失われてしまう空間分布を復元し、一細胞レベルの共局在関係を推定する。この共局在関係と深層生成モデルより得られる細胞の潜在状態を元にして、細胞間の局在関係に基づく細胞集団の同定と分子的な特徴づけ、並びにLigand自体と局在する相手の細胞のLigand pathway下流遺伝子の発現から共局在関係にある細胞間での分子的相互作用の網羅的抽出を行う。本手法をシミュレーションデータセットにより評価を行ったところ、既存の手法と比べ高い精度で細胞間の局在関係を評価可能であることが明らかとなった。さらに、実データの適用においては脳組織、扁平上皮癌、COVID-19患者肺組織のデータに対し、適用を行いいずれも妥当な共局在関係が推定されていることを確認するとともに、既知の文献と一貫性のある細胞間相互作用が多数推定されていた。また、Fibroblastからがん細胞へはINHBAを介したコミュニケーションが推定されており、これは浸潤先進部に局在するがん細胞と共局在するFibroblastに特異的に発現している遺伝子でもあった。実際にINHBAは臨床検体において、浸潤先進部のFibroblastに特異的に発現していることも確認された。これらの結果は、本手法がさまざまな空間的ニッチにおける細胞間相互作用を推定するにあたり有効な手法であることを示している。これにより、疾患の局所で起こるイベントの解明の足がかりを作り出すことが期待される。
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