研究課題
申請者らは、レンチウイルスを用いて4つの癌関連遺伝子をカニクイザルの卵に遺伝子導入させた後、MHCホモサル由来の精子を用いて顕微授精を行い、遺伝子導入された胚を仮親へ移植することでTgカニクイザルの作出に成功している。2021年度は、Tgカニクイザルの頭数を増やすために、同様の方法を用いて新たなTgカニクイザル作出を行った。また、カニクイザルの腫瘍浸潤T細胞から単離したT細胞受容体 (TCR)遺伝子を発現させたiPS細胞由来の再生T細胞をサル由来腫瘍細胞 (PTY細胞)を移植した高度免疫不全マウス (NSGマウス)に移植して抗腫瘍能を評価した。その結果、TCRを発現させた再生T細胞はPTY細胞に対して高い抗腫瘍活性を有することを明らかし、この成果を報告した (Mol Ther Oncolytics. 2021)。
3: やや遅れている
レンチウイルスを用いて作出したTgカニクイザルを解析したところ、ゲノムDNAに4つの癌関連遺伝子が挿入されていることが確認できた。このTgカニクイザルは、マーカー遺伝子としてGFPとクラビラオレンジ (KO)を導入しているため、末梢血単核球を用いてこれら蛍光タンパク質が発現しているのかをフローサイトメトリーを用いて確認した。その結果、GFPの発現は確認できたが、クラビラオレンジ (KO)は発現していなかった。クラビラオレンジ (KO)が発現していない理由として、挿入されたトランスジーンのコピー数が少ないことが考えられた。
レンチウイルスを用いて作出したTgカニクイザルは、トランスジーンが挿入されているにも関わらず、マーカー遺伝子であるクラビラオレンジ (KO)が発現していなかった。そこでトランスジーンのコピー数を増やすため受精卵に遺伝子導入する方法を改善する。具体的には、センダイウイルスの F タンパク質という膜タンパク質を用いて感染性を高めたレンチウイルスを用いてTgカニクイザルの作出を行う。また、ウイルスを用いずにTransposaseにより積極的にゲノムDNAへ遺伝子を挿入できる、piggyBac Transposon ベクターによる Tgカニクイザルの作出も試みる。
2021年度は、作出したTgカニクイザルから細胞を採取し、in vitroでドキシサイクリン (DOX)を添加し、4つの癌関連遺伝子が発現して細胞の癌化が起きるかどうかを検討する予定であった。しかし、作出したTgカニクイザルはトランスジーンが挿入されていているがマーカー遺伝子として挿入した蛍光タンパクが発現していなかった。そのため、当初予定した実験を実施することができず、次年度使用額が生じた。
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Molecular Therapy - Oncolytics
巻: 24 ページ: 77~86
10.1016/j.omto.2021.12.003