研究課題/領域番号 |
20K22844
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
野橋 智美 京都大学, 医学研究科, 特定助教 (00886319)
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研究期間 (年度) |
2020-09-11 – 2023-03-31
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キーワード | 悪性黒色腫 / 免疫療法 / immunoPET / 分子イメージング / OX40 |
研究実績の概要 |
マウス悪性黒色腫の腫瘍株をマウス下腹部皮下に移植した。蛍光イメージングにて、当初想定していた遠隔転移は生じないことが確認された。そこで方針を転換し、皮下腫瘍モデルへのSTINGワクチンの治療効果を検討することとした。STINGワクチンを腫瘍近傍、対側の腋窩(遠隔地)に色々な溶解法で皮下注射したが、無効であった(進捗状況の理由に記載)。そこで治療をCpG-ODNワクチンに変更することにした。マウスの両足皮下に腫瘍株を注射し(n = 8)、約1週間後に両足腫瘍の形成を確認、左足腫瘍内にCpG-ODN200マイクログラムを3日置きに3回注射する治療を行い、3-4日置きにサイズ計測を行った。結果、治療開始後7日目に、治療側において腫瘍の一時的な増大速度の停滞を確認することが出来た。また、対側腫瘍の増大速度停滞も、治療開始後10日目に、確認することが出来た。効果は限定的であったが、いずれも無治療群と比べると増大が遅くなることが確認された。この現象は、まずCpG-ODN治療を施された局所にて免疫応答により腫瘍攻撃細胞によって縮小し、学習した免疫細胞が数日後に対側の腫瘍に遊走して治療効果を発揮している可能性を示唆するものと考えている。また、解剖するといずれのマウスも脾臓が腫大しており、免疫細胞の産生が活性化していることも示唆された。ただ、効果は非常に一時的であり、今後Zr-89標識のPETプローブで行う分子イメージングでは、PETプローブ注射後1週間ほどの観察を予定していることからは、より明瞭に治療効果が持続するレジメンへの変更を検討する。なお現在、CpG-ODN治療側の腫瘍が縮小したマウスの、両側皮下腫瘍および脾臓のOX40などの免疫染色の結果を待ち、PETプローブの集積が期待されるかを確認するところである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
主な理由は3つある。 一つには実験可能な期間が短かったことである。産後の回復が遅く、フルタイムに復帰したのは2022/7月から、また実際に実験を開始できる体調に戻ったのは9月からである(その後、可能な限り実験の時間を確保し再開、継続中である)。 もう一つには腫瘍モデルと治療方針がまだ模索中である。申請時に計画していた治療薬のうち、STINGを治療に導入することが出来なかった。(PBS溶解では直ちに失活、製剤プロトコルや過去論文に則りDMSOやコーン油にて溶解を試みるも、視覚的に難溶性のようであった。in vivoにて様々な形でワクチンとして治療に用いることを試みたが、体内にて吸収されることなく、コントロール群との治療効果の差は見られなかった)。STING治療を断念するまでに3ヶ月ほど要した。 また、Covid-19ウイルスによる海外入国者制限のため、当施設でZr-89を生成するためのサイクロトロンの設定が大幅に遅れている。このため、Zr-89標識のPET製剤の作成にも取り掛かることが難しい状況である。
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今後の研究の推進方策 |
まずは腫瘍モデルと治療方針を早急に固定させる。CpG単剤の治療が限定的であったため、治療効果がみられるまで繰り返すか、免疫チェックポイント阻害薬との併用を検討する。また、すでに摘出された組織への免疫染色を追加し、横断的に発現マーカーの探索を試みる。 サイクロトロン設定に必要な海外技術者の渡航は本年度早々に実現する見込みであり、Zr-89の生成およびPETプローブの合成も今年度半ばには達成できると予測している。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究が計画時よりも遅れており、物品費用に消耗していないため。また、PETプローブ合成や撮影費用など、高額な費用発生は実験計画の後半に盛り込まれているため。
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