研究課題/領域番号 |
20K22844
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
野橋 智美 京都大学, 医学研究科, 特定助教 (00886319)
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研究期間 (年度) |
2020-09-11 – 2024-03-31
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キーワード | 悪性黒色腫 / 大腸癌 / 免疫療法 / immunoPET / 分子イメージング / OX40 |
研究実績の概要 |
免疫チェックポイント阻害薬に治療反応性の期待されたマウス悪性黒色腫細胞株・B16にLuciferaseを発現させたB16-F0-Lucを静脈内注射し、肺転移、縦隔リンパ節転移モデルを作成した。治療計画として、腫瘍播種後2週間後より、PD-1阻害薬単剤、PD-1阻害薬+LAG-3阻害薬、PD-1阻害薬+CpG+OX40抗体など様々な免疫療法レジメンを試みたが、一定の治療効果を示すものが得られず、また無治療群において自然退縮する個体もあり、治療モデルとして確立するのに困難を極めた。治療効果の一定しない中でも、治療効果の見られた個体と見られない個体で病理組織像に差があるか確認したところ、OX40抗体治療に反応した個体では腫瘍内でのOX40の発現が強かった。所属の腋窩リンパ節ではOX40の発現に差はなかった。 B16細胞株では免疫チェックポイント阻害薬への効果があまり期待できなかったため、皮下腫瘍モデルにて、他癌腫や治療薬を用いて探索を行った(マウス大腸癌細胞株・Colon-26、CT26, マウス乳癌細胞株・4T1, マウス大腸癌細胞株・MC38、治療薬:PD-1阻害薬腹腔内注射、LAG-3阻害薬腹腔内注射、CpG皮下注射)。結果、MC38のみ良好な治療反応性が確認でき、Colon-26はある程度有効、4T1とCT26はほぼ無効であることが確認できた。興味深いことに、MC38腫瘍モデルでは免疫療法開始後day5にて、無治療群と比較して腫瘍の一時的な増大をみとめ、その後縮小することがわかり、免疫細胞の流入による偽増大の期間をみていると考えた。現在はday5における腫瘍の免疫組織の結果を検討しているところである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
昨年度に引き続き、腫瘍モデルと治療方針を模索中である。申請時に計画していた癌腫(マウス悪性黒色腫・B16細胞株)や治療薬(STING)は有効性が確認できなかった。転移モデルの前段階として、皮下腫瘍にて癌腫と治療薬を様々トライし、動物治療モデルの確立に時間を要している。 また、Covid-19ウイルスによる海外入国者制限のため、当施設でZr-89を生成するためのサイクロトロンの設定が大幅に遅れており、2023年度に漸く合成が可能となりそうなところである。さらに、動物施設においてPET機器の故障により、撮像が不可能な状態が続いている。
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今後の研究の推進方策 |
luciferase発現MC38細胞株の樹立を行い、マウスに経静脈的に注射しIVISにて観察することで、転移モデルを作成する。その後、免疫チェックポイント阻害薬治療薬を調整し、治療効果が得られるレジメンを作成、治療モデルとして確立する。 上記完了時点で、おそらくZrの合成は可能と思われるため、Zr-OX40の合成を実施し、マウスに注射して体内動態を観察する。その際に、PETの修理が完了していればPETの撮像を実施する。もしPETが利用できない場合には、オートラジオグラフィーやバイオディストリビューションにより、薬剤の動態を間接的に観察することとする。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初よりも研究が遅れているため、期間延長が必要となったため。次年度は、luciferase発現細胞の確立に必要な消耗品、マウスの購入費、治療薬の購入、PET撮影に関わる費用などに利用する予定である。
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