研究課題
Ewing肉腫において再発・転移が大きな問題となるが、再発・転移のメカニズムは不明な点が多い。近年、治療後にも腫瘍細胞が残存し、長期間の休眠状態を経て増殖を再開する腫瘍休眠が再発・転移に関与していることが報告されている。しかし、研究は進んでおらず、休眠細胞(dormant cell)が同定・分離された報告はない。我々は、薬剤依存性に目的遺伝子の発現を制御できるTet onシステムを用いてEwing肉腫細胞株からdormant cellを同定・分離し、細胞の特性を探索することで再発・転移のメカニズムについて探索することを目的としている。我々は、細胞分裂時に分解されるH2Bと蛍光蛋白GFP融合蛋白(H2B-GFP)の遺伝子発現をドキシサイクリン(DOX)依存性に制御できるTet onシステムを用いてヒトEwing細胞株RD-ESからdormant cellの同定・分離を行った。2日間のDOX刺激後、DOXを除去して3日間培養を行った後にH2B-GFP蛋白質が分解されずにGFP蛍光を保持する細胞(RD/GFP+)をフローサイトメトリーを用いてdormant cellとして同定・分離することに成功した。続いて、同定・分離されたRD/GFP+細胞とRD/GFP-細胞の特性につき探索した。両細胞の細胞増殖能は、RD/GFP+細胞でRD/GFP-細胞と比較して、増殖能が有意に低いことが明らかとなった。また、RD/GFP+細胞では肉腫の臨床で用いられる抗がん剤(ドキソルビシン)抵抗性を有していることも明らかとなった。
2: おおむね順調に進展している
新規性の高い手法であるTet onシステムを用いてdormant cellの同定・分離することが可能であった。また、同定・分離された細胞がdormant celltとしての特性(細胞増殖能が低い、抗がん剤耐性能が高い)を持つことが証明された。過去に報告がないTet onシステムを用いたEwing肉腫細胞株からのdormant cell同定・分離の手法が確立されたため、本システムを用いてさらなる細胞特性の検討を行っていく予定である。
引き続き、in vitroでdormant cellの細胞特性につき探索を行う。細胞遊走・浸潤能、細胞周期調整因子発現、抗アポトーシス因子、転移・浸潤能などの発現をReal-time PCR、Western Blot、Flow cytometryなどを用いて評価する。その後、in vivoで、免疫不全マウスを用いてin vitroと同様の実験を行い、臨床に近い状態でのdormant cell特性について検討する予定である。
学会参加費、旅費が不要であったため。
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