本研究は、Ewing肉腫における再発・転移のメカニズム解明のために既存のヒトEwing肉腫細胞株から、治療抵抗性の要因と考えられているdormant cellを同定・分離することを目的とした。 我々は、細胞分裂時に分解されるH2Bと蛍光蛋白GFP融合蛋白(H2B-GFP)の遺伝子発現をドキシサイクリン(DOX)依存性に制御できるTet onシステムを用いてヒトEwing細胞株RD-ESからdormant cellの同定・分離を行った。2日間のDOX刺激後、DOXを除去して3日間培養を行った後にH2B-GFP蛋白質が分解されずにGFP蛍光を保持する細胞(RD/GFP+)をフローサイトメトリーを用いてdormant cellとして同定・分離することに成功した。 同定・分離されたdormant cellの割合は全細胞数の約1.5%と非常に少数の細胞集団であった。同定・分離されたdormant cellの細胞増殖能をWST-8 assayにて評価したところ、細胞増殖能の低下を認めた。また、doxorubicinに対する抗がん剤耐性能の評価でも同定・分離されたdormant cellは抗がん剤耐性能を持つことを明らかとなった。以上より同定・分離された細胞はdoramant cellの特徴を有することが明らかとなった。 非常に少数の細胞集団であるdormant cellを既存の細胞株から同定・分離することに成功した本研究は、今後のがん治療研究分野において、がんの再発・転移を早期診断・治療できる可能性があるという点で非常に意義深いと考える。
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