我々はこれまで不死化したiPS細胞由来の骨髄前駆細胞(iPS-ML)を用いた細胞移入療法について研究を行ってきた。さらにこのiPS-MLを免疫学的に強化するために我々はOX40に着目し、このligandであるOX40LをiPS-MLに導入(iPS-ML-OX40L)することで、B6マウスメラノーマに対する治療効果が増強されることを確認した。 初年度にはまずiPS-ML-OX40L治療の有効性について英文雑誌:Pigment Cell & Melanoma Researchにて世界に発信することができた。しかしながらiPS-MLの腫瘍化リスクが課題として挙がっていたため、安全性の評価としてB6マウスとMHCclassIIの一部のみが異なるマウス:129Svマウス由来のES-MLを用いて同様の治療を行い比較した。結果、ES-MLとiPS-MLとの間に有意な治療効果の差は見られず、これはすなわちMHCclassIが一致していればiPS-MLの治療効果は阻害されず、長期的には治療効果を発揮したのちにいずれ免疫学的に排除されるため、将来的にはHLAのみ一致した他人のiPS-MLで治療することにより腫瘍化のリスクの観点からはより安全に治療に用いることができるであろうことが証明された。 次年度は主に免疫チェックポイント阻害薬との併用による上乗せ効果を確認することに尽力した。新型コロナウイルスパンデミックにより進行は大幅に遅れたが、まずはin vivoにおいてマウスメラノーマに対して抗PD-L1抗体を投与する治療スケジュールについて条件設定を確認した。今後この条件にiPS-ML-OX40Lでの治療を加えることで、治療効果の上乗せについて評価を行う予定である。
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