研究課題/領域番号 |
20K22856
|
研究機関 | 東海大学 |
研究代表者 |
花村 徹 東海大学, 医学部, 講師 (00532053)
|
研究期間 (年度) |
2020-09-11 – 2022-03-31
|
キーワード | 乳癌 / 腫瘍免疫 / ZAG / アンドロゲンシグナル |
研究実績の概要 |
1. 乳癌微小環境における免疫学的フェノタイプとAR/ZAGの相関解析 乳癌臨床検体45例についてマルチカラーフローサイトメトリー(FCM)により腫瘍浸潤白血球数、及びこれに占める各種免疫細胞分画の割合を系統的に 評価、同様の検体についてAR及びZAG発現を免疫染色法にて定量し、両者の相関解析を行った。この結果、ARとZAGの発現は互いに強く 正相関するとともに両者は各種臨床病理学的因子と一定の相関関係を示した。またAR発現は乳癌微小環境における複数の免疫細胞分画の腫瘍内浸潤と逆相関することを見出し、乳癌においてもARシグナルに腫瘍免疫を抑制する働きがあることが改めて強く示唆された。続いてZAG発現がMacrophage/Monocyteの腫瘍内浸潤と逆相関することを確認し、遺伝子発現プロファイルデータを用いた予備解析の結果に一致する知見が蛋白レベルでも得られた。さらに、CD86はMacrophageの分化マーカーで、T細胞活性化を担う共通刺激分子であるが、ZAG発現は腫瘍浸潤Macrophage/MonocyteにおけるCD86発現と逆相関することを発見した。以上よりARシグナルがZAGの分泌を介し何らかの機序でMacrophage/Monocyteの分化を制御しT細胞性免疫の活性化を負に制御することで、乳癌微小環境における免疫寛容機構の一つとして働いているという、当初の仮説を強く支持するデータが得られた。 2. 免疫関連細胞株に対するRecombinant ZAGの作用の解析: これまでの乳癌 コホート遺伝子発現データを用いた解析予備解析及び上記1の解析結果からZAG発現は Macrophageの分化傾向と最も強く相関していたことからMacrophage 細胞株THP-1に対するRecombinant ZAGの作用について解析中である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1. 乳癌微小環境における免疫学的フェノタイプとAR/ZAGの相関解析に関しては予備解析の結果から予想していた結果が蛋白レベルでも既に得られており、必要なデータは揃った。当初1年から2年程度で本解析を行うことを想定していたため、予定よりかなり早く進んでいる。 2. 免疫関連細胞株に対するRecombinant ZAGの作用の解析:上記と並行して進めており、マクロファージ細胞株としてTHP-1 のM1およびM2分化モデル系を構築した上でRecombinant ZAGの機能を 解析中であるが、現在までにRecombinant ZAG単体ではTHP-1において少なくとも遺伝子発現 レベルではM1、M2いずれの分化傾向にも影響を与えないと考えられる実験結果が得られている。
|
今後の研究の推進方策 |
上記の通り臨床検体の解析では当初の予想通りの解析結果が既に得られているため、いったん解析を終了する。一方、In-vitroの解析部分で予想通りの結果が得られていない。今後さらに蛋白レベル、あるいはCo-factorとしての別蛋白存在下での実験、乳癌細胞株との共培養による実験など実験の手法を変えて検証してゆく必要があると考えている。
|
次年度使用額が生じた理由 |
本研究の臨床検体の解析に当たる部分で前年度別研究にて用いた残余試薬(主にフローサイトメトリー用の各種抗体)、及び消耗品を流用することができたため、大幅なコスト削減につながった(本年度使用の研究費の大部分はIn -Vitro解析に使用した試薬代に当てている)。 繰越金と次年度の助成金は主にIn-vitro解析に用いる試薬及び消耗品に当てるが、当初見込んでいたよりリコンビナント蛋白の必要数及び必要種類が多くなったため、全額を使い切る見込みである。
|