膵癌に対して周術期補助療法が標準治療となる。周術期のバイオマーカー開発、それに基づく個別化治療の確立が不可欠である。本研究では、膵癌に対する周術期のリキッドバイオプシーバイオマーカーの探索を目的としている。膵癌切除標本、約100症例における膵癌組織のwhole exome sequencing、パネルを用いたdeep sequencingを行い膵癌組織における変異検出のデータを解析した。KRAS 58例(57%)、TP53 38例(37%)、CDKN2A 7例(7%)、SMAD4 8例(8%)で検出された。その他にもアクショナブル変異も同定され、これらの結果は、特に日本人症例における切除可能膵癌の情報基盤となりうるとして第122回日本外科学会で報告した。これらの症例のうち、術前保存血漿が得られた33症例において保存血漿からcell-free DNAを抽出し、401遺伝子を対象としたoncopanel sequenceを行なって包括的に遺伝子異常探索を行なった。その結果、33症例のうち、21症例でドライバー変異を検出しこれらをcirculating tumor DNA (ctDNA)陽性群とすると、有意にctDNA陽性群で早期再発が多く、独立して予後不良であることが明らかとなった。さらに、頻度は低いものの組織検査では同定されなかったアクショナブル変異が同定されるサンプルも存在し、リキッドバイオプシーを指標とした個別化治療に有用であることが示唆された。この結果は論文で報告予定である。今後の展望として、前向きに術前治療前から治療経過を通じて繰り返し血液サンプルを採取して、これらの結果の実臨床における用性を検証する予定である。
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