研究実績の概要 |
今年度は、エストロゲン低下が血管炎症を介して血管老化に与える影響とエストロエン補充による改善効果について検討をおこなった。 10週齢の野生型メスマウスを用いて、エストロゲン欠乏を卵巣摘出により惹起した。血管炎症は申請者らが以前確立した塩化カルシウムの刺激とアンジオテンシンⅡの持続投与による炎症性大動脈瘤モデルを用いて(Son BK et al., Nat Commun, 2015)、卵巣摘出後に血管炎症を誘導したマウス(卵巣摘出+血管炎症誘導マウス)で、炎症惹起に伴う大動脈瘤形成の亢進と炎症性サイトカインの上昇が認められるかどうかを検討した。 その結果、卵巣摘出+血管炎症誘導マウスとsham手術+血管炎症誘導マウスの大動脈径を比較すると、卵巣摘出+血管炎症誘導マウスで優位に大動脈径が拡大した。EVG染色で血管構造を解析すると、大動脈瘤誘導によって大動脈径が拡大し、卵巣摘出+血管炎症誘導マウスでは中膜の構造がより破壊されていた。免疫染色では、卵巣摘出+血管炎症誘導マウスにおいて特にf4/80陽性のマクロファージが中膜に浸潤し、IL-6などのサイトカインに応答してリン酸化されるpSTAT3が同じく中膜で陽性となり、局所炎症の亢進が生じることがわかった。大動脈の炎症性サイトカインの変化を卵巣摘出+血管炎症誘導マウスとsham手術の対照群と比較検討したところ、大動脈瘤誘導によって上昇するF4/80, IL-6,IL-1βが卵巣摘出により上昇する傾向にあり、卵巣摘出によって局所の炎症が亢進することが示唆された。
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