研究実績の概要 |
胎児発育遅延は生後の生活習慣病の発症リスクを上げる因子である。中でも早い週数に発症した場合にリスクが高く、胎児プログラミングの時期特異性の存在が示唆される。この分子機構の解明を目指し、我々が以前に胎児プログラミングのモデルとして有用であることを示した臍帯由来間葉系幹細胞(UCMSCs)を用い、解析を行った。【方法】早産(在胎32週以下)及びSGA(出生体重10%tile未満)それぞれの有無(Term AGA : TA, Term SGA : TS, preterm AGA : PA, preterm SGA : PSと表記)4群からなる16例(各n=4)の新生児より樹立したUCMSCsのトランスクリプトーム解析を行った。【結果】各4群のUCMSCsの遺伝子発現はそれぞれ異なるプロファイルを示した。早産とSGAの2因子によるtwo-way ANOVA解析を行い、早産の有無とは独立してPSにおいてTSより発現が高い137遺伝子を同定した。遺伝子オントロジー解析では “muscle structure development”, “heart development”, “renal system development”などのアノテーションを持つ遺伝子が、DisGeNETデータベースを用いた解析では“Vascular Diseases”, “Weight Gain”, “Muscle damage” などの病態に関与する遺伝子の発現亢進が確認された。【考察/結論】本研究から、子宮内胎児発育不全による胎児プログラミングが胎生期の時期よって異なる可能性が示唆され、preterm SGAとterm SGAの臨床的特徴の差を説明すると同時に、UCMSCsが解析の有力なモデルとなる可能性が示された。
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