研究課題
今年度は、プロトロンビンのC末端にヒスチジンタグ (Hisタグ)を組み込んだプロトロンビン発現ベクターを作製し、ヒト胎児腎細胞(HEK293細胞)を用いたHisタグプロトロンビン安定発現細胞株を樹立した。作製した細胞株は、野生型(WT)および、アンチトロンビンとの結合親和性低下(ATR)およびトロンボモジュリンとの結合親和性低下(TMR)を示すと予測された変異型プロトロンビン(M380T、R431H、E509A、R596L)に加え、出血傾向を示すことが明らかとなっているG362Rの5種類である。培養上清は、Ni-NTAを用いたHisタグ精製およびバリウム吸着を行ない、CBB染色にて高純度のリコンビナントプロトロンビンを精製できていることを確認した。凝固時間法による活性測定では、WTは血漿由来ヒトプロトロンビンと同等の活性を有し、WTを100%とすると、5つの変異体は全て8.2~43.1%と有意に低下していた (p<0.0001)。合成基質法による活性測定では蛍光基質を用いたトロンビン生成アッセイを確立し、WTでは2.4nMと血漿由来ヒトプロトロンビン (2.5nM)と同等の活性を有していることを確認した。また、5つの変異体では、出血傾向を示すG362Rは0.2nMと著明に低下し(p<0.0001)、M380TとE509Aもそれぞれ1.5nM、1.6nMと有意に低値を示した(p<0.0001)。一方でR431HおよびR596LはWTと同等であった。さらに、蛍光基質を使用した残存トロンビン活性を検出するATRアッセイを確立し、ATRを示すとされているR596LでATRを確認できたため、今後他の変異体でも同様に実験を行う。また、現在分子間相互作用装置Biacoreを用いたTMとプロトロンビンとの結合親和性アッセイの条件検討を行なっている。
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