研究実績の概要 |
慢性腎臓病(CKD, chronic kidney disease)は進行すると末期腎不全に至るため、早期の重症化予測が求められる。本研究では、腎予後予測の新規バイオマーカー候補として、申請者の所属する研究室で独自に測定系を樹立した、抗エリスロポエチン(EPO)受容体抗体について、CKDにおける臨床病理学的指標および腎予後との関連について検討した。 CKDの代表疾患であるIgA腎症、膜性腎症の患者血清で血中抗EPO受容体抗体を測定し、抗体陽性例が存在することを確認した。IgA腎症例で抗EPO受容体抗体と臨床病理所見との関連を検討したところ、貧血や腎機能、尿蛋白との関連は認めず、腎病理所見と弱い関連が示唆された。腎機能低下などの腎予後との関連は認めなかった。IgA腎症において血中抗EPO受容体抗体は腎病理所見を反映するマーカーとなる可能性が示された。 また糖尿病性腎臓病における血中抗EPO受容体抗体の腎予後予測における有用性について国内学会および国内・国際雑誌による成果発表を行った。 あわせて抗EPO受容体抗体の抗原結合部位(エピトープ)の解析を行った。抗EPO受容体抗体のエピトープ候補のペプチドを作成し、抗体陽性の患者血清と反応させたところ、特異的な反応は検出されなかった。そこでペプチドをマウスに投与しペプチドに対する抗体含有血清を作成し、市販のEPO受容体と反応させたところ、数種のペプチドとの特異的な反応を認め、抗EPO受容体抗体のエピトープである可能性が示された。
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