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2020 年度 実施状況報告書

脂肪組織における多機能性分子Myoferlinの病態生理機能及び個体老化への関与

研究課題

研究課題/領域番号 20K22873
研究機関大阪大学

研究代表者

野里 陽一  大阪大学, 医学部附属病院, 特任助教(常勤) (50880390)

研究期間 (年度) 2020-09-11 – 2022-03-31
キーワードMyoferlin / マクロファージ / リソソーム / 脂肪細胞 / 脂肪分化 / インスリン抵抗性 / インスリンシグナル
研究実績の概要

肥満は、糖尿病、高血圧、脂質異常症などの生活習慣病に関連すると同時にこれらに起因する心血管疾患の危険因子である。動脈硬化巣では泡沫化したマクロファージ(Mφ)が各種サイトカインを放出して血管局所での慢性炎症反応を惹起する。さらには、近年、肥満を背景とするメタボリック症候群の病態には、過剰のエネルギー摂取に伴う脂肪細胞の肥大と過形成に加え、Mφを中心とする免疫担当細胞の浸潤と炎症性サイトカイン分泌による慢性炎症が引き起こすインスリン抵抗性が基盤にあることが注目されている。
我々はMφによるアポトーシス細胞の貪食に関わる分子としてMYOFを同定し、動脈硬化病変や肥満病態において慢性炎症惹起に及ぼすMYOFの機能に着目した。
既報では、II型膜蛋白質であるMYOFは、細胞膜や細胞内小胞の融合、レセプター蛋白のエンドサイトーシスと再利用に関与しており、様々な病態生理機能が報告されているが我々はMYOFがMφのみならず興味深いことに脂肪前駆細胞にも強く発現し、MφではMYOFがリソソームと細胞膜の融合を促進し、リソソーム酵素の開口放出及び他者融解に関与していることや脂肪組織では正常な脂肪分化や代謝機能を司る一方、肥満病態においては脂肪組織の慢性炎症・老化を強く促進させ、糖代謝異常を悪化させることを報告したが、その詳細のメカニズムは不明である。
本研究では、MYOFが肥満病態を形成する機序として、①Mφでは、MYOFがリソソームの開口放出とそれに伴う脂肪融解、Mφの活性化による脂肪炎症及びインスリン抵抗性を惹起する可能性を、また②脂肪細胞では、MYOFがinsulin及びIGF-1レセプターのrecyclingが脂肪分化を誘導する可能性を考え、その検討を行った。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

①Mφでの検討:骨髄由来Mφや肥満モデル脂肪組織由来のSVFにおいてMYOFはリソソーム酵素(Cathepsin B)の遺伝子・タンパク発現には関与していなかった。一方腹腔Mφの培養上清中へのCathepsin Bの放出はMYOF KOで減弱していた。更なる追試を検討も動物実験施設の汚染と移転工事のため、予定通りIn vivo、Ex Vivoの実験が実施できず、十分な結果の検証が行えなかった。一方、CRISPR/Cas9によるゲノム編集技術を利用し、MYOF-knockout RAW264.7細胞を作成し、炎症性サイトカインの刺激下でのリソソーム放出を検討したが、細胞株間でのばらつきが大きく、オフターゲット効果が考えられた。
②脂肪細胞での検討:既に報告の通り、弱齢非肥満マウス脂肪組織において、MYOFはinsulinシグナルを正に制御していた。そこでIGF-1レセプターもしくはinsulinレセプターのrecyclingに着目したが、WTとKOで細胞膜及び細胞質のおけるレセプタータンパクの発現量には差は認めなかった。3T3L1細胞ではSiRNAによるMYOF Knockdown(KD)でinsulinにより誘導される脂肪分化が抑制されていたが、IGF-1及びinsulinレセプタータンパクの発現量には差は認めなかった。cycloheximide chase assayではMYOFタンパクの半減期が少なくとも3-4日以上と長く、SiRNAによる一過性のKDでは評価が困難であった。また更なる追試を検討も動物実験施設の汚染と移転工事のため、予定通りIn vivo、Ex Vivoの実験が実施できず、十分な結果の検証が行えなかった。

今後の研究の推進方策

①MφでのMYOFの病態生理機能:動物実験施設汚染処理と施設移転が終了次第、In vivo、Ex Vivoの実験を再開する。WT及びMYOF KOマウス由来腹腔Mφを初代培養脂肪細胞もしくは3T3L1脂肪細胞と共培養を行い、Mφの分泌するリソソームが脂肪細胞の脂肪融解や炎症を惹起するか、またKOで減弱されるかを培養上清中の中性脂肪測定や脂肪細胞における炎症性シグナルの発現解析にて評価する。Ex vivoの系で、MYOFがMφでのリソソーム放出が脂肪融解と炎症を惹起することが証明できた場合、Mφ特異的MYOF KOマウスを作成し、高脂肪食負荷肥満モデルで脂肪組織の炎症や肥満、インスリン抵抗性が改善されるのか評価を行う。
②脂肪細胞でのMYOFの病態生理機能:
動物実験施設汚染処理と施設移転が終了次第、In vivo、Ex Vivoの実験を再開する。脂肪細胞では膜タンパクに発現するIGF-1及びinsulinレセプタータンパク及びlate endosome/lysosomeのマーカーであるLAMP2による免疫染色を行い、MYOF KO由来脂肪組織で細胞質内にレセプタータンパクとLAMP2とがmergeするendosome/lysosomeが増加するのかを評価することで、MYOFがIGF-1及びinsulinレセプタータンパクのrecyclingに関わる機能を明らかにする。

次年度使用額が生じた理由

動物実験施設の汚染と移転工事のため、予定通りIn vivo、Ex Vivoの実験が実施できなかったため。

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公開日: 2021-12-27  

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