研究実績の概要 |
急性腎障害(AKI)は慢性腎臓病(CKD)への移行率が高く、「AKIからCKDへの進行 (AKI to CKD)」の制御は将来的な末期腎不全を予防する上で重要である。しかし、AKIやCKDの治療法は確立されておらず、また「AKI to CKD」の分子機構も未解明である。本研究では、高血圧ラットSHR・SHRSP、およびこれらで抗酸化もしくは活性酸素産生に関わる遺伝子をノックアウトした新規モデルを用いて、高血圧や生体内の酸化ストレスレベルと「AKI to CKD」の病態連関を検証することを目的とした。SHRを左腎動静脈クランプによる虚血再灌流(Ischemia/reperfusion; I/R)傷害を誘導した処置群と、手術を施さない無処置群に分けた。週1回の採尿を4週間行った後、腎臓を採取して尿細管傷害マーカー(Kim-1, Clu)および線維化関連マーカー(α-SMA, Col1a1, Col4a1, TGF-β1)の遺伝子発現を定量評価した。無処置腎とI/R腎の間で、これらの遺伝子発現量に有意差は認められなかった。また、尿中アルブミン量についても、処置群と無処置群の間で有意差は見られなかった。今回のサンプリングのタイミングでは、尿細管障害マーカーについては尿細管がすでに再生されているため、また、線維化マーカーについては線維化の変化がまだ十分に進行していないため、有意差が見られなかった可能性がある。まだSHRでのみしか検討できておらず、解析個体数も十分でないため、実験条件も含め今後引き続き検証が必要である。
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