研究課題
現代の生活習慣や加齢に伴う筋肉量および筋力の低下(筋委縮)は、生活習慣病、代謝疾患、骨折、寝たきり、死亡などのリスクを上昇させ、生活の質(QOL)や健康寿命を低下させてしまうが、具体的な予防・治療法が存在しないのが現状である。我々は、腎臓に加えて肝臓や筋肉もナトリウム・体液バランス調節に重要であり、高食塩摂取下で体液の恒常性を維持するためには、①浸透圧物質である尿素を利用した腎臓の水再吸収増加、②肝臓の尿素産生亢進、③尿素産生に必要なアミノ酸・エネルギーを供給するために筋肉の蛋白質異化(カタボリズム)が亢進し、筋肉量が減少することを発見した。しかしながら、高食塩摂取に伴う筋肉量減少メカニズムは不明である。そこで本研究では、予備検討にて関与が疑われる単核貪食細胞/TonEBPに焦点を当て、高食塩摂取による筋肉量減少メカニズムを解明し、加齢や現代社会の生活習慣に伴う筋委縮機序の一端を明らかにすることを目的とした。野生型マウスに高食塩を摂取させると筋肉量減少が認められたが、単核貪食細胞特異的TonEBP欠損マウスではその減少量が有意に抑制された。また、同マウスの筋肉組織を用いてRNA sequenceを実施したところ、高食塩摂取に伴う筋肉量減少と関連する遺伝子として蛋白質Aを同定した。マウス培養マクロファージに対して高NaCl培地を処置すると、TonEBP発現量の増加および蛋白質Aの発現量・分泌量の減少が認められた。また、高NaCl培地刺激によるこれらの変化は、TonEBP siRNAによって、完全に抑制された。以上の実験結果より、高食塩摂取に伴う筋肉量減少には、単核貪食細胞/TonEBP/蛋白質Aが関与している可能性が示唆された。
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Life Sciences
巻: 289 ページ: 120192
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Journal of Pharmacological Sciences
巻: 147 ページ: 245-250
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