研究課題
急性肝障害の重症型である急性肝不全は種々の原因によって引き起こされる症候群であり、その病態は不明な点が多い。肝臓は再生能に富んだ臓器で肝再生は肝疾患の病態形成に関与する。詳細については未だ不明な点が多いが、近年は成熟肝細胞自体が多様性に富み、高い可塑性を有し障害時には成熟肝細胞の脱分化に引き続いて細胞増殖を行うことが示唆される。急性肝不全の発症機序には、過剰な免疫細胞の活性化と肝内の微小循環障害とそれに引き続く肝内低酸素が急性肝不全の病態形成に関与していることが指摘されており、臨床的には組織低酸素を反映するLDHを指標に、LDH低値群 (ALT/LDH > 1.5)とLDH高値群 (ALT/LDH ≦1.5)の2郡に分類され、LDH高値群では肝障害の程度が強く、凝固異常が顕著であり、組織学的にもLDH高値例では類洞内の血栓形成と組織低酸素によって誘導されるHIFやその転写調節を受ける分子の発現上昇を認め、組織低酸素が顕著である。各種のマウス急性肝障害モデルで検証を行うとConcanavalinA (ConA) 15mg/kg投与マウス急性肝障害モデル(ConAモデル)は臨床におけるLDH高値群を、Galactosamine/tumor necrosis factor (TNF)‐α投与急性肝障害モデルマウス(G/Tモデル)はLDH低値群を反映したモデルと考えられた。また急性肝障害モデルとして頻用されているアセトアミノフェン肝障害モデル(APAPモデル)でも同様に組織低酸素の関与を示唆する肝障害と考えられた。APAPモデルにおいても肝細胞の脱分化マーカーであるAFPやPROM1、LGR5の発現上昇が見られることが確認され、類洞血流障害が関与する急性肝障害においても肝細胞の可塑性、多様性が関与することが示唆された。
すべて 2022
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 2件)
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