食習慣の欧米化 (脂質・ショ糖の過剰摂取)によって引き起こされる腸内細菌の乱れ(Dysbiosis)や内臓脂肪組織の慢性炎症は糖尿病の成因の一つである。発酵食品により増加する抗炎症作用の中心となる腸内細菌・メタボライトを同定し、同定した代謝産物を中心とした“腸―内臓脂肪連関”を明らかにすること目的に本研究を実施した。 味噌(フンドーキン醤油株式会社、麦みそ)を発酵食品の代表として用いる。B6/Jマウス(雄・8週齢、各群10匹)に12週間高脂肪高ショ糖食±味噌食を給仕した。両群間で体重に有意な差はなかったが、握力/体重比は味噌投与群で有意に高値であった。味噌投与群で耐糖能は有意に改善した。味噌投与群で有意な内臓脂肪量の減少、ヒラメ筋重量の増加を認めた。味噌投与群で有意な便、血液、骨格筋中の短鎖脂肪酸濃度の上昇を認めた一方で、血液、筋肉中のパルミチン酸濃度は低下し、反対に便中へのパルミチン酸排泄は上昇した。味噌投与群で小腸粘膜固有層の炎症細胞が減少、抗炎症細胞が増加し、小腸粘膜固有層の炎症細胞が減少、抗炎症細胞が増加した。さらにはRT-PCRにより評価した小腸のCd36遺伝子発現は味噌投与群で有意に低下していた。最後に腸内細菌叢解析において、短鎖脂肪酸の生成に関わるAlloprevotella属を含むPrevotellaceae科やChristensenellaceae科が増加していた。 さらにヒト血球より分離した2型自然リンパ球に飽和脂肪酸であるパルミチン酸を投与したのち、マルチカラーフローサイトメトリーを用いたサイトカインアッセイでは有意にIL-5及び13陽性細胞が減少することが明らかとなった。 これらの結果から、発酵食品は食の欧米化によるDysbiosisを改善することで栄養吸収に関わる小腸の遺伝子発現を改変し、種々の代謝改善作用を発揮することが明らかとなった。
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