研究課題/領域番号 |
20K22883
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
庄司 聡 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 助教 (00875411)
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研究期間 (年度) |
2020-09-11 – 2022-03-31
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キーワード | 心不全 / レジストリ / Patient Experience / 標準診療 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、患者自身に実際に受けた診療内容を問うことで、医師の標準診療の遵守状況を客観的に評価できるPX(Patient Experience)という手法を、標準診療の遵守率が特に低い心不全領域で初めて取り入れ、現場医師のより自発的な行動変容を促す手法を提案することであった。
初年度である本年度は、上記研究の基盤となる医師の標準診療の遵守状況の検証と、その行動指針の作成に尽力した。第一にPCI後最も頻度の高い合併症である造影剤腎症に関する研究を行った。標準診療として、治療前に患者背景から造影剤腎症の発症リスクを推測し、そのリスクに応じて造影剤量を調整することが推奨されているが、リスクに応じた造影剤調整は必ずしもなされていないことを提示し、医療現場では術前のリスク評価が過小評価されていることを明らかにした [Shoji et al. JAHA 2021 in press]。また、心不全の日常臨床では、高齢者や腎機能障害患者に対する至適薬物療法等、エビデンスが乏しく標準診療の適応に迷う場面に多く遭遇する。これまでの診療ガイドラインではこうした診療に推奨度を設定する事が困難であり、そうした背景の中で、適切性基準(AUC)は現場医師のより実践的な判断を後押しするために開発された。具体的には、議論が分かれる診療の適切性を、複数の多職種からのアンケートを元に系統的に集約・洗練するDelphi法を使用し、3段階(適切である、どちらともいえない、適切とはいえない)で提示する。米国でのカテーテル診療に関して発展したAUCだが、これまで心不全診療に関するAUCは存在しなかったため、今回心不全診療におけるAUCの策定を初めて行った [Shoji et al. ESC heart failure 2021]。本指針をベースに、標準診療の遵守率向上に向けた研究を進めていく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
循環器急性期疾患に対する標準診療の遵守状況を把握し、その解決策を提示することを目的とした研究は順調に進んでいる。上記以外にも、CVITの全国規模の公募研究課題に採択され、PCI治療の標準診療7項目に関して、遵守率、施設間・地域間でのばらつき、また時系列推移を検証した論文を作成し現在投稿中である。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度には、患者視点からの標準診療遵守のための手法の開発と臨床現場へのフィードバックを行う予定である。現在、開発に向けた文献レビューと質問票の作成を開始し、臨床研究プロトコルや倫理委員会申請書の作成を専属の臨床研究コーディネーターとともに行っている。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度の研究には、研究プロトコル作成や申請書の作成、また、EDC準備等に伴う設備投資に研究費を当てることを想定している。このような研究の進捗状況のため、次年度を支出タイミングとするほうがより適切と判断した。
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