研究課題/領域番号 |
20K22886
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研究機関 | 大阪医科大学 |
研究代表者 |
藤井 裕子 大阪医科大学, 医学部, 助教 (90878472)
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研究期間 (年度) |
2020-09-11 – 2022-03-31
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キーワード | 微小変化型ネフローゼ症候群 / 酸化ストレス / ミトコンドリア |
研究実績の概要 |
小児期に好発する微小変化型ネフローゼ症候群とミトコンドリア障害の関連性を明らかにするため、研究目的に掲げた「微小変化型ネフローゼ症候群発症後におけるミトコンドリア特異的抗酸化剤投与による蛋白尿減少効果の検討」に関しての実験を進めた。 6週齢の雄のラットにピューロマイシンアミノヌクレオシドを投与後、day1~day9の蛋白尿の増加を確認した。蛋白尿は投与後から直線的に増加し、ネフローゼ状態となった。day0より有意に蛋白尿が増加した日を発症日とし、確定した。発症日から、微小変化型ネフローゼ症候群モデルラットに、ミトコンドリア特異的抗酸化剤であるMitoTEMPOを連日投与した。MitoTEMPO投与を行わなかった微小変化型ネフローゼ症候群モデルラット群に比して、MitoTEMPO投与を行った群で、ピューロマイシンアミノヌクレオシド投与後day10の蛋白尿は減少していた。ピューロマイシンアミノヌクレオシド投与後にネフローゼ状態となってからであっても、ミトコンドリア特異的な抗酸化の効果は得られると考えられる。すなわち、既報で示したように、ミトコンドリア特異的な抗酸化剤は、微小変化型ネフローゼ症候群の再発予防となるというだけではなく、初発時や再発後のネフローゼ状態においても、治療薬として有効な可能性がある。 今後はこの実験系での酸化ストレスマーカーの測定とミトコンドリア障害の評価を進めていく予定である。また、もう一つの研究目的である「ミトコンドリア障害の経時的進行と蛋白尿増加の関連性の検討」に関しても実験を開始する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新型コロナウイルスの流行により、試薬や物資の納入に遅れがあった。 また、新たに導入した蓄尿サンプル採取のための代謝ケージに不具合があり、販売会社とも協議を重ねていたが、新型コロナウイルスの流行により、順調に協議が進められなかった。結果として、デモ用の追加部品の納入が遅れたため、不具合の解消に4か月を要した。
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今後の研究の推進方策 |
「微小変化型ネフローゼ症候群発症後におけるミトコンドリア特異的抗酸化剤投与による蛋白尿減少効果の検討」に関しては、ミトコンドリア障害の評価や酸化ストレスマーカーの測定を進めていく。 「ミトコンドリア障害の経時的進行と蛋白尿増加の関連性の検討」については、実験プロトコールの作成は終了しており、プロトコールに基づいて実験を開始する。蓄尿サンプル採取のための代謝ケージの不具合があったが、追加部品で対応し、現在テスト実験を行っており、解消できる見込みである。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルスの流行により、試薬や備品の納入に遅れが生じた。また、新規に導入したラット用代謝ケージの不具合が生じ、メーカーへの問い合わせなどを行ったが、新型コロナウイルスの流行の影響により、協議に時間を要した。追加物品で対応することとなったが、約4か月間不具合の状態を解消できず、ラットに関連した実験を進めることができなかった。そのため、次年度使用額が生じた。 次年度は、ラットに関連した実験を再開するため、ラットと実験系改良のための飼育関連の物品の購入費用等に充てる予定である。すでに検体採取済みの系に関しては、ミトコンドリア障害の評価と酸化ストレスマーカーの測定を行うため、電子顕微鏡用標本の作製や付属品の購入、酸化ストレスマーカーの試薬購入等への使用を考えている。
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