研究課題/領域番号 |
20K22888
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研究機関 | 愛知県医療療育総合センター発達障害研究所 |
研究代表者 |
西川 将司 愛知県医療療育総合センター発達障害研究所, 分子病態研究部, リサーチレジデント (00871758)
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研究期間 (年度) |
2020-09-11 – 2022-03-31
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キーワード | 神経細胞発達 / マウス組織 / 発現解析 / RhoGEF |
研究実績の概要 |
Rhoファミリー低分子量Gタンパク質の活性化因子であるPLEKHG2は、知的障害(ID)を伴う小頭症の責任分子であるため、胎児期の脳構造形成・発達に必須の役割を果たすことが確実視される。しかしながら、PLEKHG2が中枢神経発達で果たす役割は全く不明なので、その遺伝子変異がID・小頭症を引き起こす分子病態機構も未解明である。そこで、PLEKHG2の生理機能、および、遺伝子変異を原因とする病態の分子基盤の解明を目指し、PLEKHG2が大脳皮質・海馬形成に果たす役割と病態形成機構を解析している。本年度は、PLEKHG2の特異抗体を作成し、マウス中枢神経組織における発現解析を行った。その結果、大脳皮質・海馬で発現していること、脳組織での発現が発達依存的に変化することが判明した。また、生化学的に分画したシナプス小胞とシナプス後膜画分に濃縮していた。免疫組織染色法では、胎生14日目の脳室帯細胞、生後7・30日目の大脳皮質2/3層、および5層、海馬歯状回・CA1野の神経細胞に強く発現していた。また、発達に伴いニューロピルの染色も認められた。海馬初代培養神経細胞における免疫蛍光染色では、培養3・7日目で細胞質、軸索、樹状突起上に発現し、14日目では、興奮性シナプスおよび抑制性シナプスに部分的に局在した。これらの結果から、PLEKHG2が神経組織発達、および神経回路ネットワーク形成に関与する可能性が示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
特異抗体を用いたマウス中枢神経組織におけるPLEKHG2発現解析は、学術論文として研究成果をまとめることができた。さらに、PLEKHG2が制御する細胞内シグナルが、神経細胞の分化に重要という知見も得られ始めている。これらのことから、本研究はおおむね順調に進展していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究は、神経細胞の分化に関わるPLEKHG2の細胞内シグナル経路について解析を進めていく予定である。PLEKHG2は、Rac/Cdc42の活性化因子として細胞形態制御を司る分子であるため、神経細胞の分化 (軸索・樹状突起・スパイン形成等) でPLEKHG2シグナルがはたらくタイミングと、その機能の解析を実施する。さらに、知的障害の原因となるPLEKHG2変異体(p.R204W)の病態形成機構を分子レベルで解明する。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍で参加する学会がWeb開催となったので、出張費が当初の予定よりも少なかった。次年度、PLEKHG2の細胞内シグナル解析、変異体解析を進めるために研究費を使用する予定である。
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