研究課題/領域番号 |
20K22895
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研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
伊藤 剛 東京医科歯科大学, 高等研究院, プロジェクト助教 (20733900)
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研究期間 (年度) |
2020-09-11 – 2022-03-31
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キーワード | IFN-1 / RIP1 / Atg16L1 / アポトーシス / ネクロプトーシス |
研究実績の概要 |
本年度は当初研究計画に従い、樹立済のアポトーシス、ネクロプトーシス経路の中心分子であるRIP3、MLKL遺伝子欠損マウス、RIPキナーゼ不活化マウスより腸上皮オルガノイドを樹立しIFN-1添加により、IFN-1が誘導する細胞死に対するその分子機構について検討を加えた。その結果以下の知見を得ている。 1)IFN-1はcell death assay, WBにより容量依存的にアポトーシス、細胞死を誘導すること。2)IFN-1による細胞死誘導はcell death assayによりネクロプトーシスの中心構成分子であるRIP3、MLKL遺伝子欠損により改善を認めることによりIFN-1はネクロプトーシスを誘導することを確認した。3)WBよりRIP3欠損ではIFN-1によるアポトーシスに誘導される遺伝子群に変化がなかったのに対し、しRIP1キナーゼ不活性によりIFN-1が誘導するアポトーシスは著明な細胞死誘導抑制効果を認めたこと。cell death assayにおいてもRIP1キナーゼ不活性がIFN-1誘導細胞死を著明に制御したことよりRIP1キナーゼ活性がIFN-1が誘導するアポトーシス、ネクロプトーシスにおいてキー分子である可能性を示唆した。 研究代表者はIFN-1が誘導する細胞死がAtg16L1欠損腸上皮オルガノイドにおいて増長されることは既に明らかとしていたため、以上の結果から同経路においてもRIP1キナーゼ活性が中心的な役割を示すことが予想された。そこでオートファジー欠損下でのRIP1キナーゼの役割を解析するためAtg16L1欠損、RIP1キナーゼ不活性マウスを作成した。同マウスから腸上皮オルガノイドを作成しIFN-1が誘導する細胞死への影響の解析を行ったところAtg16L1により増長される細胞死はRIP1キナーゼ不活性により改善されることを明らかとした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画に則り、各種遺伝子欠損マウスから腸上皮オルガノイドを作成し、IFN-1下流の細胞死誘導メカニズムについて解析中であり、キー分子を同定している。同キー分子とオートファジーの関連を検討するためAtg16L1・RIP1キナーゼ不活性マウスも樹立済みであり、その表現系解析も一部終了し、RIP1キナーゼがIFN-1が誘導する細胞死のキー分子であり、オートファジーと細胞死の関連においてもキー分子である可能性を示唆する新たな知見を得ている。従って研究は概ね順調である。
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今後の研究の推進方策 |
今後は当初の研究計画に則り、樹立したAtg16L1欠損RIP1キナーゼ不活性オルガノイドを用いて、オートファジー関連遺伝子Atg16L1とRIP1キナーゼの関連について分子生物学的解析だけでなくRNAシークエンスを用いて解析を加える予定である。また樹立したヒト腸間オルガノイドライブラリを用いて各種インヒビターなどを使用し、ヒト腸上皮におけるIFN-1の細胞死誘導メカニズムの詳細を検討していく予定となっている。
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次年度使用額が生じた理由 |
試薬等が計画当初より廉価で購入可能であったため差額が生じた。 検討する数・種類を拡大して解析を行うことや、オルガノイド培養を拡大するため、試薬を増量して購入する予定である。
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