研究課題/領域番号 |
20K22896
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研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
村上 正憲 東京医科歯科大学, 医学部附属病院, 助教 (00740432)
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研究期間 (年度) |
2020-09-11 – 2022-03-31
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キーワード | 内分泌学 / 高血圧学 / オミクス解析 / アルドステロン |
研究実績の概要 |
申請者は難治性高血圧の原因の一つであるアルドステロン産生腺腫(APA)の組織を対象に施行したオミクス解析から、カリウムチャネル遺伝子(KCNJ5)の体細胞変異を有するAPAに特異的に発現する遺伝子群を特定している。本研究ではこれらの候補遺伝子が、APAの特徴であるアルドステロン合成能や腫瘍化にどのように関わっているのか、詳細に解析することを目的としている。次世代シークエンサーを用いた網羅的解析により、KCNJ5体細胞変異を有するAPA(KCNJ5 mut+)に特異的な分布をするmiRNAとして、KCNJ5 mut+において発現が低下しているmiR-299を同定し、その標的遺伝子としてカルシウムイオンチャネル遺伝子CACNB2を抽出した。CACNB2はKCNJ5 mut+において遺伝子発現量が上昇しており、miR-299の制御を受けてアルドステロン合成能や腫瘍化に関与している可能性がある。さらにアルドステロン合成能への関与を評価するために、ヒト副腎皮質癌細胞であるH295Rに対してアンギオテンシンⅡを作用させ、アルドステロン合成酵素(CYP11B2)の発現上昇時におけるCACNB2の遺伝子発現動態について解析した。CYP11B2はアンギオテンシンⅡの投与後6時間で発現上昇のピークを迎え、24時間後には発現量が低下傾向となる。NURR1やNUR77といったステロイド合成に関与する転写因子については投与後1時間の早期から発現上昇が見られることが特徴である一方、CACNB2についてはCYP11B2と同様に投与6時間で発現上昇のピークを迎え、24時間後には投与前と同様の発現量へ戻っていることを見出した。この結果は、アンギオテンシンⅡの作用に対してCACNB2とCYP11B2が並行した遺伝子発現動態を示しており、CACNB2がアルドステロン合成能を修飾している可能性を示したと言える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ヒト副腎皮質癌細胞であるH295Rを用いた実験系を確立し、オミクス解析から得られた候補遺伝子の機能解析を開始できている。進捗は概ね順調と考える。
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今後の研究の推進方策 |
microRNA(miR299)の導入、抑制によりCACNB2並びにCYP11B2の遺伝子発現が変動するかどうかをH295Rを用いて検証する。さらに、miR299の作用について細胞周期への影響を評価する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度はヒト副腎皮質癌細胞H295Rを用いたin vitro実験系の確立と、候補遺伝子の機能解析の予備検討が中心となったため支出が予定より下回った。次年度は外注費用や、遺伝子導入などの試薬など支出の増大が見込まれるため妥当な配分と考えられる。
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