研究課題
申請者はアルドステロン産生腺腫(APA)の組織を対象に施行したオミクス解析の結果から、カリウムチャネル遺伝子(KCNJ5)の体細胞変異を有するAPAに特異的に発現する遺伝子群を特定している。本研究ではこれらの候補遺伝子が、APAの特徴であるアルドステロン合成能や腫瘍化にどのように関わっているのか、詳細に解析することを目的としている。KCNJ5体細胞変異を有するAPA(KCNJ5 mut+)で発現量が上昇している遺伝子として、カルシウムイオンチャネル遺伝子をコードするCACNB2を抽出した。APA組織において、CACNB2はアルドステロン合成酵素をコードするCYP11B2と遺伝子発現量が正相関しており、APA発症メカニズムに関与していることがわかった。一方APAについては、組織内の不均一性が知られており、単一細胞レベルでのRNA-seqが詳細な病態解析に有用と考えられた。APA組織を対象に核抽出法を用いたsingle-nucleus RNA-seqに取り組み、約4000核を対象にした解析を施行したところ、13個のクラスターを得ることが出来た。CYP11B2を高発現するクラスターについては、CACNB2も同様に高発現し、マーカー遺伝子として抽出されることが明らかとなった。さらに培養細胞を用いた機能解析を行うため、ヒト副腎皮質癌細胞であるH295Rに対してCACNB2発現ベクターを遺伝子導入したところCYP11B2遺伝子発現量の上昇を認めた。以上より、CACNB2がAPA発症におけるアルドステロン合成能の上昇に関与している可能性が示された。
すべて 2021
すべて 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 2件、 査読あり 2件) 学会発表 (12件)
Eur J Endocrinol.
巻: 185 ページ: P179~P191
10.1530/EJE-20-1407
European Journal of Endocrinology
巻: 184 ページ: P1~P16
10.1530/EJE-20-1088