研究実績の概要 |
サルコペニアに代表される骨格筋の異常は、多くの病態とかかわっていることが明らかになっており、その背景として複数のマイオカインが全身の代謝調節因子として報告されている。しかし脂肪肝や肥満の発症に直接影響するマイオカインの報告は限られており、その病態意義はいまだ明らかではない。 60%高脂肪食を用いて、野生型のC57BL/6J(Jackson Laboratory)雄マウス(n=87)を12週間飼育し、体重増加、糖代謝異常、脂肪肝について解析を行った。その結果、脂肪肝マウスモデルにおいて体重41.6gのカットオフと共に肝重量、肝脂肪量、肝脂肪化、及び血中インスリン濃度が大きく変化することを見出した。またこのカットオフを用いてマウスを過体重(overweight 41.6g未満)、肥満(obese 41.6g以上)の二群に大別し、その骨格筋におけるマイオカインの発現についてqPCRを用いて解析を行い、新たにマイオカイン関連6因子(Angptl4, Bdnf, cxcl1, Igf1, IL-6, Pgc1a)がマウスモデルにおける脂肪肝、インスリン抵抗性の増悪に関連していることを見出した。これらの知見は骨格筋が栄養状態に応じてマイオカインを分泌することで、肝臓および脂肪組織との臓器相関を調整し、脂肪肝の病態形成に関わっていることを示唆している。 しかしながらマイオカインがもたらす組織間の相互作用は不明な点が多く、また詳しい分子作用機序は不明である。本研究ではさらに上記の6因子について、主に培養系を用いて肝細胞への影響を明らかにする。
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