神経系、免疫系、代謝系は相互連関を介して組織恒常性の維持に寄与する。本研究ではセマフォリンを介した神経-免疫-代謝連関の制御機構の解明を目的として、骨髄と脂肪組織を対象に解析を行なった。 交感神経系は骨髄においては造血幹細胞の維持、分化制御を担う一方で、脂肪組織においては脂肪分解を促進する。我々は神経ガイダンス因子であるセマフォリン6Dが骨髄内の交感神経分布を制御することを明らかにした。さらに、神経細胞由来Sema6Dの欠損により、高脂肪食負荷時に肥満抵抗性、ミエロイド造血の亢進をきたすこと、これらがβ3アドレナリン受容体を介した交感神経シグナルの亢進によることをマウスモデルで明らかにした。また、脂肪組織においてはSema6Dの欠損により高脂肪食負荷時の異化反応(lipolysis)の亢進を認めた。Sema6DのシグナルはPlexin-A1やPlexin-A4を介することが報告されている。Plexin-A4欠損マウスを用いて高脂肪食負荷を行ったところ、Sema6D欠損マウスと同様に、肥満抵抗性、造血異常を認めた。すなわちSema6D-Plexin-A4シグナルが交感神経を介した代謝-免疫連関形成を担うことが明らかとなった。次に造血幹細胞の機能維持にSema6Dが寄与するのかを検討した。5-FU、LPS、β-gulacanなどの刺激は骨髄内のmyelopoiesisを引き起こすが、Sema6D欠損マウスでは造血応答が亢進していた。また5-FU及び放射線照射モデルにおいてSema6D欠損により致死率が上昇した。これらの結果から、Sema6Dは造血幹細胞を保護していることが明らかとなった。
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