研究課題/領域番号 |
20K22904
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
樋口 悠介 熊本大学, 病院, 助教 (80882141)
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研究期間 (年度) |
2020-09-11 – 2022-03-31
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キーワード | HTV-1 / HBZ / IL-10 / STAT3 |
研究実績の概要 |
HBZとSTAT3の結合について、ATLの症例で高頻度に見られる変異(D661Y)を加えた変異型STAT3を発現するプラスミドを作成し、HBZ及び野生型STAT3あるいは変異型STAT3を強制発現させたうえで共免疫沈降を用いてHBZと各STAT3との結合を評価したところ、野生型STAT3よりも変異型STAT3がHBZと強固に結合することを見出した。また、HBZの病原性発現におけるIL-10の役割を評価するためにHBZトランスジェニック(HBZ-Tg)マウスにIL-10ノックアウト(IL-10 KO)マウスを交配し、HBZ-Tg/IL-10 KOマウスを作成した。表現型の観察を行っていたところ、HBZ-TgマウスやIL-10 KOマウスと比較し、HBZ-Tg/IL-10 KOマウスでは腸炎による顕著な体重減少を来たし、早期に死亡することが判明した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
HBZがATL症例でみられる変異型STAT3と強固に結合するということはHTLV-1の病原性発現においてHBZとSTAT3の結合が重要な意義を持つことを示唆しており、これらの知見はATL細胞の発生機序を知る上で重要な情報になると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
変異型STAT3が野生型よりもHBZと強固に結合するという所見は、STAT3への変異挿入がHBZ-STAT3による発がん機序に大きな影響を及ぼす可能性を示唆している。HBZ-変異型STAT3が宿主遺伝子の転写に与える影響について、特にIL-10刺激下における変化をトランスクリプトーム解析やChIP-seqなどを用いた網羅的解析を行う。また、STAT3の転写の変調によって影響を受ける遺伝子について、ノックダウンあるいは強制発現により形質変化を解析する。 IL-10抑制によるHBZ病原性に与える影響について解析するため、HBZ-TgマウスとIL-10 KOマウスを交配し観察を行ったところ、HBZ-Tg/IL-10 KOマウスでは腸炎の増悪や体重減少が見られた。この所見はHBZがIL-10欠損による自己免疫性腸炎を増強することを示唆している。今後コンディショナルノックアウトマウスでの解析を検討している。
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次年度使用額が生じた理由 |
R2年度に作成予定だったプラスミドDNAの完成が遅れ、配列確認目的のシークエンス受託解析をR3年度に行うため持ち越した。
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