クリックケミストリーを適用したプロテオミクス解析によりミリストイル化蛋白質の網羅的解析を行い、心筋細胞におけるミリストイル化蛋白基質を同定した。siRNAまたはアデノウイルスshRNAによるN-myristoyltransferase (NMT) 2ノックダウンで、H9c2心筋細胞、仔ラット心筋細胞のN-ミリストイル化レベルが著しく低下すること示し、心筋細胞をアンジオテンシンⅡ(AⅡ) で刺激し、AⅡに反応して全体のN-ミリストイル化レベルが有意に減少することを示した。アデノ随伴ウイルス 9 を用いた遺伝子導入により、マウス心臓に特異的な NMT2を過剰発現させたところ、横行大動脈縮窄後 4 週間で圧力負荷による左室収縮機能障害、心肥大、心筋線維化が有意に改善されることが示された。 本研究では心不全におけるN-ミリストイル化の病態意義を解明し、それが治療法の開発につながるか検討した。心不全と密接に関連するN-ミリストイル化を同定して、N-ミリストイル化を正常にコントロールすることにより心筋細胞内のタンパク質品質管理が維持され、心不全の改善が期待される。さらに、N-ミリストイル化とオートファジーとの関連性を明らかにすることで、タンパク質分解機構のメカニズム解明につながる可能性がある。
|