研究課題
高血圧症は脳心血管病発症の最大のリスク因子であるが,その病態生理はいまだ十分に解明されていない.本研究では,「皮膚組織レニン・アンジオテンシン系(RAS)が血圧・体液・電解質バランスの調節に寄与し,高血圧症の発症・進展に関わっている」との仮説を検証するため,1型アンジオテンシンII受容体(AT1受容体)情報伝達系の内在性抑制因子であるATRAP(AT1 receptor-associated protein)に着目し,病態モデル動物,皮膚組織特異的ATRAP発現制御動物(皮膚組織特異的RAS活性制御動物),ヒト皮膚組織を用いて,高血圧症における皮膚組織RASの病態生理学的意義を検討した.C57BL/6マウスと比較してRAS感受性が亢進しているとされる129/Svマウスでは,アンジオテンシンⅡ(AngⅡ)負荷による血圧上昇率がC57BL/6の約2倍であった.また,灰化-炎光光度法により測定した皮膚ナトリウム量は,C57BL/6マウスと比較して129/Svマウスで増加傾向にあった.一方で,高食塩負荷では,C57BL/6マウスと比較して129/Svマウスの血圧上昇率は約1.5倍であったが,AngⅡ実験でみられた皮膚ナトリウム量増加は認めなかった.本結果は,皮膚において特に組織RASと高血圧が関連している可能性を示唆する.また,皮膚組織特異的ATRAP発現変動動物に関しては,Cre-loxPシステムを用いてケラチノサイト特異的ATRAP欠損マウスの作成に成功し,同マウスのケラチノサイトではATRAP発現がmRNAレベルで十分に減少していることを確認し,現在,AngⅡ負荷や塩分負荷を含めた高血圧病態モデルでの検討を行っている.そして,ヒト皮膚組織を用いた臨床研究に関しては,2022年4月末日時点で計40症例分の検体収集を終えており,今後,30症例での中間解析を予定している.
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すべて 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 2件、 査読あり 2件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 3件)
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