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2020 年度 実施状況報告書

グリアコネキシン発現エキソソームによる多発性硬化症の制御と血液バイオマーカー開発

研究課題

研究課題/領域番号 20K22910
研究機関国際医療福祉大学

研究代表者

Maimaitijiang Guzailiayi  国際医療福祉大学, その他部局等, 特任助教 (60887107)

研究期間 (年度) 2020-09-11 – 2022-03-31
キーワード多発性硬化症 / エキソソーム / グリアコネキシン / 脱髄炎
研究実績の概要

多発性硬化症(multiple sclerosis, MS)ではグリアギャップ結合蛋白コネキシン(Cx)43が急性脱髄病巣で喪失し慢性期に増加する。Cx43遺伝子のGJA1はN末短縮イソフォーム(GJA1-26kDイソフォーム)もコードする。GJA1-26kDイソフォームはチャネル機能は持たないが、RNA結合ドメインを有している。本研究では、健常対照(healthy control, HC)とMS患者で末梢血の血清中エキソソームを精製し、抗Cx43抗体でウェスタンブロットを行った。その結果、HCに比べてMSでは急性再発期と慢性進行期にGJA1-26kDイソフォーム発現エキソソームが著増することを見出した。さらに、MSの動物モデルである実験的自己免疫性脳脊髄炎(Experimental autoimmune encephalomyelitis, EAE)で、急性期から慢性期にかけて、末梢血の血清中エキソソームのウェスタンブロットで、GJA1-26kDイソフォームを発現するエキソソームが増加していることを発見した。EAEでは脱髄炎は主に脊髄に生じる一方、脳皮質アストログリアがEAE発症前に活性化することが報告されていたが、その意義は全く不明だった。脳皮質アストログリア特異的・時限的にCx43をinducible conditional knockout (icKO)したところ、脊髄の脱髄炎が著明に減少するとともに、GJA1-26kDイソフォームを含有するエキソソームが著減した。以上から、アストログリア由来のGJA1-26kDイソフォームを発現するエキソソーム(グリオソーム)は、脱髄炎を遠隔性に制御している(増悪させている)と考えた。今後、その機序の解析を進める予定である。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

1: 当初の計画以上に進展している

理由

2020年度では、多発性硬化症(multiple sclerosis, MS)の動物モデルである実験的自己免疫性脳脊髄炎(experimental autoimmune encephalomyelitis, EAE)において、末梢血の血清から精製したエキソソームの抗Cx43抗体によるウェスタンブロットで、急性期から慢性期にかけて免疫前に比べてGJA1-26kDイソフォームが著明に増加していることを見出した。脳皮質アストログリア特異的・時限的にCx43をinducible conditional knockout (icKO)したマウスでは、EAEが軽減するとともに、GJA1-26kDイソフォームを含有するエキソソームが著減した。またCx43 icKOマウスでは脾臓リンパ球からの抗炎症性サイトカインIL-10産生が亢進し制御性T細胞(Treg)が誘導され血清IL-10が増加した。したがって、GJA1-26kD isoform発現エキソソームは、脳皮質アストログリア由来でTregの誘導を抑えるなどの機序でEAEを増悪させていると考えた。そこで、健常対照(healthy control, HC)とMS患者で末梢血の血清中エキソソームを精製し、抗Cx43抗体でウェスタンブロットを行ったところ、HCに比べてMSでは急性再発期と慢性進行期にGJA1-26kDイソフォーム発現エキソソームが著増することを見出した。したがって、GJA1-26kDイソフォーム発現エキソソームはヒトでもMSの増悪に関連していると考えた。

今後の研究の推進方策

2021年度は、EAEにおいては、①野生型、脱髄炎が軽減するCx43 icKOの各マウスでEAE各病期に採血する。②エキソソーム抽出キットにより全エキソソーム分画を精製し、セルソーターによりGJA1-26kD isoform を発現するエキソソームのみを分離し、含有されているMiRを次世代シークエンスで解析しEAEの各病期で特徴的に変動するMiRを同定し、定量PCR法で確認する。③GJA1-26kD isoform発現エキソソームに含有されるグリア由来の分子(Glial fibrillary acidic protein, GFAP)や炎症性サイトカインを、超高感度デジタルELISAのsingle molecule assay (SIMOA)法で計測する。MSにおいては、④MS患者の各病期でエキソソーム抽出キットにより全エキソソーム分画を精製し、GJA1-26kD isoformを発現するエキソソームをセルソーターで精製し、上記EAEで脳グリア由来エキソソームに含有されることが示されたMiRやGFAP、炎症性サイトカインを定量的PCR法やSIMOA法で測定する。⑤MS患者の臨床情報とGJA1-26kD isoform発現エキソソーム量やこれらに含有されるMiRやGFAP、炎症性サイトカインとの相関を解析し、MS各病期に特異的なCx発現エキソソームやそれに含有されるMiR等を同定する。

次年度使用額が生じた理由

新型コロナウイルス感染のために2020年度は学会発表を行わなかったので、旅費が使用されなかった。その分、2021年度に学会発表をする予定である。また国際学会などや英語論文の執筆がなかったので、その他の英文校正料が発生しなかった。新型コロナ感染のために実験の進行がやや遅れたので、物品費が若干使用されず、2021年に使用する予定である。

  • 研究成果

    (2件)

すべて 2021 2020

すべて 雑誌論文 (1件) 学会発表 (1件)

  • [雑誌論文] Early decrease in intermediate monocytes in peripheral blood is characteristic of multiple system atrophy-cerebellar type2020

    • 著者名/発表者名
      Matsuse D, Yamasaki R, Maimaitijiang G, Yamaguchi H, Masaki K, Isobe N, Matsushita T, Kira J.
    • 雑誌名

      Journal of Neuroimmunology,

      巻: 577395 ページ: 349

  • [学会発表] T細胞受容体gamma鎖領域欠失型コピー数変異と多発性硬化症末梢血gamma delta T細胞分画の変化2021

    • 著者名/発表者名
      グザリアイ・ママティジャン、迫田礼子、渡邉充、篠田紘司、中村優理、磯部紀子、松下拓也、吉良潤一
    • 学会等名
      第62回日本神経学会学術大会

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公開日: 2021-12-27  

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