研究課題
オリゴデンドログリアとアストログリアは、グリアコネキシン(Cx)で細胞間ギャップ結合を形成し、それを通じてのエネルギー源の供給やカリウムイオンのバファリングにより脳の恒常性を維持している。それのみならず、実験的自己免疫性脳脊髄炎(experimental autoimmune encephalomyelitis, EAE)において、私たちはグリアCxが脳炎症を制御する重要な役割を担っていることを報告している。多発性硬化症(multiple sclerosis, MS)では、グリア炎症が脱髄炎を悪化させている。私たちはMSの剖検脳標本で、広汎なグリアCxの異常を明らかにしている。グリアから放出されたエクソソームは血液脳関門を通過できるので、本研究ではMSの末梢血のグリア由来エクソソームを解析した。MSでは、再発緩解型の再発期と二次進行型で血液アストログリア由来のグリア線維性蛋白を含有するエクソソームが増加していた。さらにCx43をコードするGJA1は、酸化ストレスなどで低分子量イソフォームの発現が増える。MSの末梢血では低分子量イソフォームのうち、GJA1-29kが著増していた。一方、野生型マウスEAEでは末梢血で急性期から慢性進行期にかけてGJA1-29kを発現するエクソソームが著増した。アストログリア特異的Cx43 inducible conditional knockoutマウスのEAEでは、その増加がなくなったことから、GJA1-29kは大部分が脳アストログリア由来と考えた。Cx43低分子量イソフォームは、チャネル機能を失うがRNA/DNA結合部位を保持する。GJA1-29kはマイクロRNAなどを伝搬することで脳炎症の増幅に寄与していると考えられた。
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Neurology Neuroimmunology and Neuroinflammation
巻: 10(2) ページ: 1-13
10.1212/NXI.0000000000200081