研究課題
本研究の目的は、IgA腎症患者の糖鎖異常をもつIgA1形成における口蓋扁桃の役割を明らかにすることである。COVID-19パンデミックによる手術件数の減少に伴い、口蓋扁桃サンプル回収が遅れていたが、2021年度に入り口蓋扁桃摘出術件数が回復し、2021年度中にIgA腎症患者(n=13、年齢中央値32.0歳(23.0-54.0))、慢性扁桃炎患者(対照群)(n=10、年齢中央値28.5歳(19.5-39.3))のサンプル回収を終えた。慢性扁桃炎患者に比して、IgA腎症患者では、血清IgA値が有意に高く(P=0.0104)、KM55で測定したGalactose deficient (Gd)-IgA1値も有意に高値(P=0.024)であった。Gd-IgA1のIgA当たりの割合は同等であった。また、口蓋扁桃から単核球を回収し、セルソーターを用いて、CD19陽性IgM陽性細胞(ナイーブB細胞)、CD19陽性IgA陽性細胞、CD19陰性IgA陽性細胞(IgA産生形質細胞)に分画すると、ナイーブB細胞、CD19陽性IgA陽性細胞の割合は同等だが、IgA産生形質細胞の割合が有意にIgA腎症患者で増加していた。また、口蓋扁桃組織構造に関して、IgA腎症患者において胚中心領域の縮小が観察された。胚中心面積を定量化するために、口蓋扁桃凍結切片を抗Bcl6抗体とDAPIで染色し、面積の定量化プロトコールを確立した。
3: やや遅れている
初年度にCOVID-19パンデミックのため、扁桃摘出術の手術件数が減少し、患者登録の遅延が生じた。2021年度に手術件数が回復し、本年度は順調に進んでいる。
今後、各群患者のIgA1ヒンジ部O結合型糖鎖プロファイルの差違を質量分析計を用いて明らかにする予定である。また、セルソーターで分画したナイーブB細胞、CD19陽性IgA陽性細胞、IgA産生形質細胞における各糖転移酵素の発現差異および組織中のサイトカインプロファイルの差違をRT-PCRで明らかにする予定である。さらに、免染を用いた胚中心面積割合の定量化を試みる。IgA腎症患者口蓋扁桃中で増加しているIgA産生形質細胞が胚中心を介さない抗原親和性の低いIgAの産生に関わっている可能性にも着目していく予定である。
初年度でCOVID-19パンデミックによるサンプル回収の遅延が生じ、研究の遂行が滞った。次年度は、質量分析法を用いて各群患者の血清IgAヒンジ部O結合型糖鎖解析、免染を用いた口蓋扁桃組織解析、RT-PCRを用いた口蓋扁桃サイトカインプロファイル解析および単核球中の糖転移酵素発現解析に助成金を使用する予定である。
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J Clin Med.
巻: 10 ページ: 3467
10.3390/jcm10163467