当時の予定では申請者らは新規の進行性かつ不可逆的な肺線維化モデルを樹立した。特発性肺線維症(IPF)は進行性に不可逆的な肺の線維化を呈する原因不明かつ予後不良の疾患であり、生存率を改善する薬剤は存在しないとされている。IPFの病態解明とそれに準じた治療ターゲットの選定において、そのIPFの病態を模倣するモデルの利用は不可欠である。そこで今回の研究ではそのモデルを用いてIPFの治療応用へ展開可能な基盤情報を確立することを目的とし、マクロファージと胸膜中皮細胞の病態関与様式に着目し実験及び研究を行う予定であった。しかし、当時申請者らの樹立した肺線維化モデルにおいて1) 病態関与マクロファージのsubpopulationの同定と関与様式の解明;2) 臓側胸膜を構成する中皮細胞のin vivo tracing系の構築の2点を本研究の目的としていたが、コロナ禍の影響により予定していた実験を遂行することが困難となった。
今後は、限られた資源を利用しコロナ渦でも当研究室内で実験可能な肺高血圧症モデル動物を用いて骨髄、末梢血、肺における単核球に注目し肺高血圧症の病態形成と単核球の関わりについて研究を遂行することにした。研究の大きな流れとして、1匹のマウスの骨髄、末梢血液、肺組織から単核球を分離してRNAseqをSugen/HypoxiaPHマウスとコントロールとで比較するし、RNAseq後に大きく違いが出たところに注目し、その後詳細な解析を行う事を目標とした。まず、正常マウスを用いて右心カテーテルの手技の確立に取り組み、次に1匹のマウスの骨髄、末梢血、肺から実際に単球のみを抽出する手技の習得に取り組んだ。最後に肺高血圧症モデルであるSugen-HypoxiaPHマウスが実際に作成出来るかを取り組んだが、依然Sugen/HypoxiaPHモデルマウスを作成する事が出来ずに実験が難航している。
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