研究実績の概要 |
当初、当該年度には、in vitroでの実験系を用いたデータ収集を中心に研究を実施する予定であった。しかしながら、新型コロナウイルス感染症の感染拡大により、研究室内の設備を用いた研究の中断を余儀なくされる期間が大幅にあったことから、研究計画の一部を修正実施することとした。具体的には、heterogeneousな腫瘍細胞集団がintrinsicないしextrinsicな「選択圧」を受けて変化する過程をとらえる一環として、in silicoにてその過程をモデル化することを試みることとした。その前段階として、正常肺組織の単一細胞遺伝子発現プロファイル(The Tabula Muris Consortium, Nature, 2020;583:590-595; Du et al, Thorax, 2017;72:481-484)を用いて、機械学習にて腫瘍細胞集団の性状分類の系を構築することを試みた。まず、正常肺組織から得られた単一細胞遺伝子発現データ(RNA-sequencing data)をinput dataとして、neural network modelの学習を行うことで、特定の細胞集団について上皮系・間葉系の"寄与度"を推定するモデルを構築した。続いて、それを腫瘍細胞の遺伝子発現データに適用することで、腫瘍細胞集団の性状を判定する系を構築した。さらに、その系を用いて、上皮系の性状を持つ腫瘍細胞集団と、間葉系の性状を持つ腫瘍細胞集団を分類し、それぞれについて、臨床データと照合することで、予後解析をおこなった。 本研究成果については、2021年2月の第18回日本臨床腫瘍学会学術集会にて本研究者が口頭発表を行った。
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