本研究では、研究代表者らが独自に開発を行なってきたiPS 細胞由来の「自己組織化腸管スフェロイド」を用い、実際の移植治療に応用可能な機能的腸管グラフトへと成熟させる技術の開発、および臨床応用への検証としてマウスを用いた「自己組織化腸管スフェロイド」の移植技術の開発を目指す。本研究の遂行により臨床応用可能な技術開発の基盤のみならず、腸上皮幹細胞による体外での自律的な3次元臓器形成、機能獲得に関する重要な知見を創出することが期待される。 本年度は、「ヒトiPS細胞由来自己組織化腸管スフェロイドのマウス移植」の研究計画に従い、ヒトiPS細胞から誘導された自己組織化腸管スフェロイドをNSG超免疫不全マウスに移植し、in vivoでさらなる組織成熟を検討した。In vitroでの成熟を目安に、移植時期最適化を図ったところ、バイオリアクターによる回転浮遊培養によりin vitroにおける成熟、スフェロイド増大が確認できた。引き続き、腸管スフェロイドを免疫不全マウスの腸間膜に移植することで、成熟を観察したところ、生体に生着した後の挙動が、培養条件およびiPS細胞株間において差異が生じることが確認された。特に間質細胞成分の発達が乏しい場合において、上皮細胞の成熟が妨げられることが確認された。また、培養中の成熟度により、スフェロイド管腔の多嚢化が見られた。今後、本研究成果を基盤として、実際の移植治療に応用可能な腸管グラフトを作出する研究基盤となるような技術の開発を続ける。
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