研究課題
本研究は、1.成人末期腎不全患者の遺伝学的背景を明らかにすること、2.遺伝学的にネフロン癆と診断された症例に特徴的な臨床・病理学的所見を明らかにすること、3. iPS細胞からの腎臓オルガノイドと遺伝子改変マウスの駆使、などから、ネフロン癆の新規病態解明や新規治療法開発につなげることを目的としている。1.成人末期腎不全患者の遺伝学的背景を明らかにするために、複数の透析病院と共同研究を立ち上げ、100名以上の説明同意を得て血液検体の採取を行った。ネフロン癆の 1/4を占めると考えられるNPHP1欠損の簡易PCRスクリーニング法を開発しスクリーニング検査を実施し、さらに次世代シーケンサーを用いた網羅的遺伝子解析を予定している。2.腎生検にてネフロン癆の可能性が疑われた日本全国の成人患者を集めて網羅的遺伝子解析を行い、本邦でも成人慢性腎臓病患者の中にネフロン癆患者が潜在していることを遺伝学的に明らかにした。さらに、遺伝学的にネフロン癆と確認・診断された症例は、腎生検時の年齢が若い傾向があることを明らかにした。また、ネフロン癆の遺伝子変異を認める患者には、組織学的に尿細管の基底膜に厚い二重化が認められることを明らかにした。これらの結果は、本邦において、成人でも原因不明の腎機能障害患者に対してネフロン癆を疑う重要性を明らかにすると同時に、その臨床像は成人におけるネフロン癆の診断の一助となるものであり、今後の慢性腎臓病診療に繋がることが期待される。3.遺伝子改変マウスとiPS細胞のネフロン癆モデル作成に成功した。現在、ネフロン癆の新規病態解明や2で得られた所見の病態生理的意義を探索している。
2: おおむね順調に進展している
1.維持血液透析を受けている成人末期腎不全患者から血液検体を採取およびNPHP1欠損の簡易PCRスクリーニング法の開発2.遺伝学的にネフロン癆と診断された症例に特徴的な臨床・病理学的所見の解明を学会報告した3.遺伝子改変ネフロン癆モデルマウスとiPS細胞の作成とおおむね順調に進展している。
1.維持血液透析を受けている成人末期腎不全患者から血液検体を用いて、次世代シーケンサーによる網羅的遺伝子解析を実施する2.遺伝学的にネフロン癆と診断された症例に特徴的な病理学的所見の病態生理的意義の解明を目指す3. iPS細胞と遺伝子改変マウスのネフロン癆モデルを駆使して新規病態解明を行う
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