研究課題/領域番号 |
20K22928
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
安武 秀記 大阪大学, 医学系研究科, 特任研究員 (60748515)
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研究期間 (年度) |
2020-09-11 – 2022-03-31
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キーワード | デュシェンヌ型筋ジストロフィー / 疾患iPS細胞 / 心筋症 |
研究実績の概要 |
DMD心筋症の進展機序に心筋の増殖能が関与するかを調べるためDMD患者由来iPS細胞(DMD-iPS細胞)を用いてiPS心筋細胞の増殖能を評価した。 DMD-iPS細胞をCRISPR/Cas9によりゲノム編集しアイソジェニックなコントロール細胞(ED-iPS細胞)を作成し、これらの分化誘導iPS心筋の増殖能を調べたところ、トリプシン処理により障害を受けたiPS心筋は再播種早期に高い増殖能を有していたがDMD-iPS心筋はED-iPS心筋及び健常人由来iPS心筋と比較し増殖能の低下を認めた。 細胞の増殖および組織再生に関わる転写因子yes associated protein (YAP)活性をYAPの局在性により評価したところDMD-iPS心筋で有意に低下し、YAP活性の低下がDMD-iPS心筋の増殖能低下に関与していることが分かった。 しかし、本研究によるiPS心筋のYAP活性の変化は培養皿上の特殊な条件下での反応でありDMD心筋症の病態との関連は不明である。そのため、DMD-iPS心筋の増殖能低下がYAP活性の低下以外に別の要因も関与している可能性があり、現在RNAシーケンスにより増殖能低下に関わる遺伝子を網羅的に解析を行っている。 また、DMDはDMD遺伝子の変異部位により異なるphenotypeを示すことが知られてる。今回、別のDMD遺伝子変異を有する患者由来iPS細胞を用いた解析も始めている。それにより増殖能に関与するエクソン領域やジストロフィンアイソタイプについても調べていく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
iPS心筋の発現遺伝子をRNAシーケンスにより網羅的に解析し、細胞周期や心筋症の発症に関与する遺伝子を同定した。 さらに別のDMD患者由来iPS細胞の培養系も構築し、解析を進めている。
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今後の研究の推進方策 |
今後RNAシーケンスより同定した遺伝子に着目しiPS細胞の機能解析を行う。また異なるDMD遺伝子変異のiPS細胞の解析から、DMD遺伝子のエクソン領域やジストロフィンアイソタイプがiPS心筋の増殖に関与するかについても調べていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度RNAシーケンスを行う予定であったが、iPS細胞の状態が安定しなかったためサンプルの回収に遅れが生じた。その後iPS細胞の状態は安定しサンプルの回収ができたが、RNAシーケンスは次年度の予算として請求することとなった。
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