最終年度は健常人由来iPS細胞とエクソン48-54に欠損が生じているDMD-iPS細胞およびCRISPR/Cas9によりエクソン55を切断し、フレームシフトによりジストロフィンを修復したアイソジェニックコントロール細胞(ED-iPS細胞)に加え、別のDMD患者由来のエクソン46-47の欠損が生じているDMD-iPS細胞(DMD2-iPS細胞)を用いて遺伝子発現の網羅的解析を行なった。 DMD-iPS細胞およびED-iPS細胞の未分化状態および分化誘導心筋の遺伝子発現をRNAシーケンスにて比較したところ、未分化状態のDMD-iPS細胞とED-iPS細胞において279個の遺伝子に有意な変化(FDR<0.05)を認め、一方で分化誘導心筋のDMD-iPS細胞とED-iPS細胞において29個の遺伝子に有意な変化を認めた。 未分化状態および分化誘導心筋のジストロフィンアイスタイプの発現パターンを調べたところ未分化状態においてDMD-iPS細胞とED-iPS細胞は有意にDp71の発現を認めた。分化誘導心筋においてもDMD-iPS細胞とED-iPS細胞はDp71の発現は有意であったが、DMD-iPS細胞と比較し、ED-iPS細胞においてDp427mの発現の上昇を認めた。 これらの結果によりRNAシーケンスで得られた未分化状態におけるDMD-iPS細胞とED-iPS細胞の遺伝子発現の変化にDp71の関与が示唆され、一方で分化誘導心筋におけるDMD-iPS細胞とED-iPS細胞の遺伝子発現の変化にDp427mの関与が示唆された。未分化状態で有意な変化が確認された279個の遺伝子において増殖能に関与する遺伝子を認め、今後はDp71と増殖能の関与についても調べていく。 また健常人由来iPS細胞やDMD2-iPS細胞も併せて確認し、エクソン領域の役割についても検証していく。
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