血圧変動性(血圧値の動揺)の増大が、心血管疾患、腎臓病、認知症の発症進展と関連すると報告されている。臨床的には、血圧変動性の種類として、一拍毎の変動から受診間(数日~数ヶ月)の変動まで、様々な時間軸の変動性がある。しかし、時間軸の長短に関係なく、変動性増大と心血管疾患リスク上昇の関連が報告されており、変動性増大の基盤となる共通のメカニズム・病態の存在を示唆している。しかし現在、変動性増大の病態解明が不十分であり、治療介入の有用性および治療手段が明確にされていない。さらに、これらの課題を解決するための動物モデル実験系に乏しい。 本研究代表者は、既に、ノルアドレナリン(NA)またはアンジオテンシンII(Ang II)を、ラットに持続投与することにより、血圧変動性増大のモデルが作成可能であることを報告している。変動性増大作用は、それぞれα1とAT1受容体を介していることが判明した。今回は、両モデルの圧受容器機能の解析を目的として、弓部大動脈や頚動脈洞の血管壁厚の計測、コラーゲンやエラスチンの発現定量により、血管硬度の定量を試みた。一方で、24時間血圧連続モニタリングのデータを利用して、sequence解析により圧受容器感度を定量した。さらに変動性増大に対する実験的治療として、種々の薬剤の効果を観察した。 その結果、NAおよびAng II投与ラットの血圧変動性増大の機序や有用な薬剤に関する複数の新たな知見を得た。それらの成果について、論文を作成・投稿中であり、2022年秋の国際学会で発表する。
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