近年、各種臓器に由来する細胞外マトリックスを利用した臓器再生が試みられており、呼吸器領域における報告も散見される。そこで本研究では、多能性幹細胞(ES細胞)から肺由来脱細胞化マトリックス(LM)を用いた3次元培養により肺機能を有する肺オルガノイドの分化・創出・解析を目標とした。 初年度(令和2年度)は、まず、成獣マウス由来のLMと、シート状に加工したLMSheetの調製条件を検討した。成獣マウスの肺をSDSにより脱細胞化処理後、LMを調製した。LMを固定後、凍結切片を作成し、H&E染色により細胞除去処理を確認することができた。 次に、LMをシート状に細切加工し、LMSheetを用いて多能性幹細胞(マウスES細胞)の3次元培養を行った。培養した組織の各種肺細胞マーカー(1型肺胞上皮細胞:AQP5、2型肺胞上皮細胞:SPC、クラブ細胞:CC10など)の遺伝子発現を精査した結果、LMSheetを用いた場合、各種肺細胞への分化誘導を認めた。 本年度(令和3年度)は、加えて各種気道上皮細胞マーカー(基底細胞:TRP63、線毛細胞:FOXJ1、杯細胞:MUC5AC、クロライドチャネル:CFTRなど)の遺伝子発現を精査し、気道上皮細胞への分化誘導も認めた。また、3次元培養後の組織を固定後、凍結切片作成、H&E染色を行ったところ、LMSheet内での細胞生着を認めた。 今後、上記で得られた肺様組織(肺オルガノイド)の組織学的解析と分化誘導条件の最適化をさらに行う予定である。
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