In vitroで3xFLAG tagをEvi1遺伝子の3’端にノックインしたマウス造血細胞株32Dcl3をCRISPR-Cas9 systemを用いて作成することに成功した。この細胞株においてChIP-seqを施行し、正常造血におけるEvi1の下流標的たりうる候補遺伝子を複数同定した。さらにEvi1をノックアウトした同細胞株のRNA-seqのデータや、Evi1高発現マウス白血病細胞を利用したChIP-seqのデータと統合することで、正常造血に特異的な、造血細胞の未分化性維持に関わる可能性の高い遺伝子群を抽出した。この遺伝子群候補の生理的な意義を検証するために、Evi1を条件的に欠失させることが可能なマウスの骨髄細胞を用いた検証を行った。具体的には、これらの遺伝子群の中で、Evi1欠失に連動して発現の低下する遺伝子群を、Evi1と協調して造血幹細胞の未分化性の維持に関わる遺伝子として考えた。Evi1欠失したマウスの造血幹細胞に候補遺伝子を過剰発現させることによ り、コロニー形成能が回復するかを検証したところ、Gfi1が候補遺伝子として考えられた。マウスの競合移植の系を用いることによりEvi1欠失がGfi1の過剰発現によりレスキューされるかを検証したところ、レスキューされることを見出した。これらex vivoおよびin vivoの系での検証から、正常造血モデルにおいてGfi1がEvi1の下流標的であり、協調して幹細胞性の維持に寄与している可能性を見出した。
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