研究課題
潰瘍性大腸炎(Ulcerative colitis: UC)は、世界的に増加傾向にある難治性疾患で、病態解明を目指して多くの研究がなされてきたが、確固たる病因は不明である。申請者らは、UC患者において非常に高い感度・特異度を示し、病態と関与する可能性のある抗インテグリンαVβ6自己抗体を発見した。本研究では以下の方法により、この抗インテグリンαVβ6自己抗体が病因であるか検証し、これに基づいた疾患特異的診断法の開発および病態解明のためのUCモデルマウスを確立することを目指す。①UC診断における自己抗体の有用性の検討、②UCの疾患活動性と自己抗体の相関解析、③UC患者より抽出した自己抗体の病原性の証明、④インテグリンαVβ6免疫によるUCモデルマウスの確立①②では集積した症例について検討した結果、診断については予備実験(感度92%、特異度95%)と同様非常に良好な結果であり、抗インテグリンαVβ6自己抗体と既存の疾患活動性評価の指標には、比較的強い相関関係が認められた。③④ではUC患者より抽出したIgG投与・インテグリンαVβ6免疫、いずれにおいても大腸に明らかな粘膜障害は認められなかった。以上より、抗インテグリンαVβ6自己抗体はUCの診断・疾患活動性評価において有用なバイオマーカーとなる可能性が示唆され、論文投稿(Kuwada et al. Gastroenterology. 2021)・学会発表などを行なった。病原性については、確証は得られていないものの、本自己抗体はUCの病態に関与する可能性のある機能(インテグリンαVβ6-フィブロネクチン阻害作用)を有する抗体であり、今後も病態解明・疾患モデル動物確立を目指して研究を継続する予定である。
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Gastroenterology
巻: 160 ページ: 2383-2394
10.1053/j.gastro.2021.02.019
巻: 161 ページ: 1725-1726
10.1053/j.gastro.2021.08.008