研究課題/領域番号 |
20K22940
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研究機関 | 自治医科大学 |
研究代表者 |
山田 直也 自治医科大学, 医学部, ポスト・ドクター (50611787)
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研究期間 (年度) |
2020-09-11 – 2022-03-31
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キーワード | フェロトーシス / 脂質酸化 / 鉄 / 肝臓 |
研究実績の概要 |
申請者らは様々な肝疾患とフェロトーシスの関連を報告してきたが、肝細胞は脂質代謝、鉄代謝、グルタチオン産生など、フェロトーシスに関連する様々な因子に関わるため、肝細胞に特異的なフェロトーシス制御機構があると考え、その探索を行った。 肝特異的なフェロトーシス制御因子を探索を目的に、肝癌由来細胞株Huh7を用い、RSL-3で誘導されるフェロトーシスについて、CRISPR/Cas9ライブラリーを用いた遺伝子スクリーニングを行ったところ、対象となる約20000種類のの候補遺伝子のうち、ある代謝酵素遺伝子Xを同定し、Xの欠損細胞ではフェロトーシス抵抗性を示すことを見出した。Xは肝組織で発現の高い代謝酵素であるため、肝特異的なフェロトーシス因子であると考えられた。Xの阻害剤を使用した場合にも肝細胞フェロトーシスは抑制されることを確認した。さらに、Xの基質となる脂質Yを添加した場合にもフェロトーシスが抑制されることを見出した。 脂質Yはアラキドン酸を始めとする多価不飽和脂肪酸と比較して、酸化されやすい性質をもつとされており、Yが優先的に酸化されることによってフェロトーシスに直結する多価不飽和脂肪酸の酸化が抑制されていると推察している。現在、細胞内脂質の酸化反応におけるXやYの役割を解析するために質量分析系の確立に取り組んでいる。また、Xの生体内での役割を明らかにするため、動物モデルでの検討を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
肝細胞に特異的なフェロトーシス制御因子である遺伝子Xを同定した。さらに、Xの基質となるYの上昇が肝細胞フェロトーシスを抑制することが明らかになり、現在その機能の詳細な解析と動物モデルでの検討、肝疾患制御の可能性へと研究を進めている。候補遺伝子Xの同定に成功していることから順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
遺伝性Xの欠損下や基質となるYの上昇によるフェロトーシス抑制のメカニズムを解析するため、脂質酸化物の質量分析を行う。 また、生体内での役割を検討するため、Xの阻害剤アセトアミノフェン急性肝不全モデルやGPX4欠損マウスでの肝障害の抑制に寄与するかどうかを検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナウィルス感染症による研究活動制限等で遅延した。次年度は遅延した分の実験の実施のための試薬、実験器具、実験動物等の購入に使用する。
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