晩婚化や初産の高齢化により、体外受精や顕微授精などの生殖補助医療(ART)を選択する不妊治療患者数は、年々増加の一途を辿っている。しかし、ARTの成功率は、約25%程度に頭打ち状態であり、不成功例の主原因は、胚着床(機能)不全が指摘されている。また、この着床不全は、胚(受精卵)と子宮内膜の微小環境の不適性化が原因で生じると推測されているが、ホルモン補充療法による治療効果はほとんど認められない。そのため、本研究では、まずヒト胎盤幹(TS)細胞と子宮内膜細胞の共存した胚着床オルガノイドモデルを作製し、ヒト着床機序について理解を深め、子宮内膜に直接作用するTS細胞の着床不全に対する有効性を、in vitroにて検証することを目的とする。初年度は、TS細胞だけでなくTS細胞オルガノイド(トロフォシスト)やナイーブ型ES細胞より分化誘導した胚盤胞様構造物(ブラストイド)と子宮内膜(上皮に加え、間質細胞も付加)を用いたヒト胚着床オルガノイドを作製し、着床を再現する形態的な遺伝子発現による評価を行った。その結果、トロフォミストとブラストイドおよび子宮内膜細胞のオルガノイドを作製し、両者が共存可能かつ子宮内の胎盤発生を促す培養条件を検討した。その際、オルガノイド共培養時の子宮内膜上皮の応答については、細胞肥厚などの形態変化や腺成熟マーカーの発現確認、細胞増殖マーカーの染色を行った。また、子宮内膜間質細胞については、妊娠子宮内膜に特徴的な脱落膜の分化マーカーの発現を確認した。
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