研究課題
これまで我々の研究グループは、術後せん妄の評価に軸索損傷バイオマーカーであるリン酸化ニューロフィラメント重鎖(pNF-H)を指標とすることでせん妄患者の中枢神経ダメージを定量化し、それによりせん妄発症と重症化における血液脳関門の破綻機序を報告してきた。その研究成果を踏まえて、本研究では食道癌根治術を受ける患者を対象とし、せん妄発症の有無を調査し、末梢血で測定可能な様々なバイオマーカーをpNF-Hとともに測定、比較することにより、術後せん妄の予防開発と臨床像との対応付けを明らかにすることを目的とした。最終年度までに、140名461検体分のpNF-Hの計測、120名400検体分のApo E、P-Selectin、PECAM-1、NSE、MMP-9、PAI-1、IL-6、Leptin、Resistinの計測を終え、除外された患者を除く96名を解析対象として解析を行った。全体の15.6%にあたる15名で術後せん妄を発症し、患者背景としては年齢と術式が術後せん妄の発症と関連していた。血清pNF-H値が、術後せん妄患者で0PODから3PODまで持続して高いレベルにとどまっていたことから、pNF-Hが周術期急性期においてはタイミングに関係なく術後せん妄のマーカーとなる可能性があることが示唆された。また、微小血管血栓症および線維素溶解のマーカーであるPAI-1は、術後せん妄患者の1PODに急激に増加し、0PODから1PODにおけるPAI-1の上昇は術後せん妄と強く関連していた。このことから感度が高いPAI-1とpNF-Hを組み合わせることで、せん妄の早期診断の精度を高めることができる可能性が示唆された。これらの結果は現在論文投稿中である。
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JOURNAL OF GERONTOLOGY AND GERIATRICS
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