研究課題/領域番号 |
20K22949
|
研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
村田 梢 京都大学, 医学研究科, 助教 (80884329)
|
研究期間 (年度) |
2020-09-11 – 2022-03-31
|
キーワード | iPS細胞 / 成熟化 / 心筋細胞 / オルガノイド / 脂肪酸 |
研究実績の概要 |
ヒトiPS細胞を用いた心臓再生医療・創薬研究においては分化細胞の未成熟性が課題である。我々は心臓を構成する多種の分化細胞による三次元組織化(ヒトiPS細胞由来生体模倣性人工心臓組織)が成熟化に関わることをこれまでに見出したが、ヒト心筋組織に近い十分な成熟化は再現されていない。一方、ヒトiPS細胞由来心筋細胞の成熟化においてはエネルギー産生が主に糖代謝から脂肪酸代謝に変わる代謝スイッチが重要であることが知られている。本研究では、ヒトiPS細胞由来生体模倣性人工心臓組織の代謝スイッチに伴う成熟化メカニズムを解明し、そのプロセスの制御法を見出すことを目的とする。本年度は、人工心臓組織フォーマットの確立として、人工心臓組織を構成する細胞として、心筋細胞・血管内皮細胞・血管壁細胞を既報の方法によって誘導し、細胞組成の比率の最適化を図った。次にその人工心臓組織が成熟化に向かう培養条件の特定を行った。その結果、パルミチン酸、オレイン酸、リノレン酸といった各種脂肪酸の他にも培地中に含まれる因子が人工心臓組織の成熟化に関与することを見出した。未成熟な心臓組織は外部からの電気刺激の周波数に応じて負の相関を示して拍動力が低下していく。一方、成熟化することによって、外部周波数が低下するに従い、拍動力は増加していくことが知られている。今回、脂肪酸添加という成熟化処理により人工心臓組織の拍動力が成熟化に向かっている傾向をとらえられた。次年度はさらに、人工心臓組織が成熟化に向かう最適な培養条件の最適化を行うとともに、心臓組織成熟化を、物理生物学的機能、組織学的特性(電子顕微鏡観察を含む)、生化学的特性、配向性を評価することによって検討する。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
人工心臓組織フォーマットの確立として、人工心臓組織を構成する細胞として、心筋細胞・血管内皮細胞・血管壁細胞を既報の方法によって誘導し、細胞組成の比率の最適化を図った。またその人工心臓組織が成熟化に向かう培養条件の特定を行い、脂肪酸以外の因子も成熟化に関与することを明らかにした。成熟化処理を施した人工心臓組織は成熟化の指標の一つである、外部刺激に対する拍動力の変化のパターンがより成熟化心臓組織に近づいていることを確認した。
|
今後の研究の推進方策 |
次年度も引き続き、人工心臓組織が成熟化に向かう最適な培養条件の特定を行うとともに、心臓組織成熟化の評価として、心臓組織の成熟化を、物理生物学的機能、組織学的特性(電子顕微鏡観察を含む)、生化学的特性、配向性を評価する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍における研究活動の制限、学会参加の制限のため。次年度は人工心臓組織成熟化の評価として組織学的評価の解析費用および次世代シークエンス解析費用として使用する。
|