研究課題/領域番号 |
20K22952
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研究機関 | 島根大学 |
研究代表者 |
宮嶋 久雄 島根大学, 学術研究院医学・看護学系, 助教 (80874362)
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研究期間 (年度) |
2020-09-11 – 2022-03-31
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キーワード | ARDS / 脳症 / サイトカインストーム / サイトカイン |
研究実績の概要 |
急性呼吸窮迫症候群 (ARDS) は、感染症に起因する肺炎や敗血症等が原因で起こる重度の呼吸不全であり、長期的な脳機能障害が現れることが報告されている。ARDSに伴うサイトカインストームが脳機能障害(サイトカインストーム後脳症)の発症に関与すると考えられているが、詳しい病態メカニズムは分かっていない。本研究では、ARDSに続発するサイトカインストーム後脳症を動物モデルにより再現し、血液脳関門の破綻に関与するIL-17に着目して病態解明を目指す。 まず初めに、LPS (Lipopolysaccharide) の気管内投与による、ARDSのマウスモデル(LPS誘導性の急性肺損傷マウス)を作製した。長期的な脳機能障害を観察するために、LPSの投与濃度を検討し、本実験に最適なLPSの投与量を決定した。そして、ARDS発症マウスの血液中や気管支肺胞洗浄液 (BALF) 中、肺組織における、IL-17を含めた各種サイトカインの発現をELISA法により検証した。その結果、ARDS発症に伴う、IL-17及び各種サイトカインの発現上昇が確認された。さらに、それらの経時的変化を測定し、血漿中IL-17は超急性期に発現上昇することを明らかにした。また、並体結合を利用し、ARDS後のサイトカインストーム暴露を模した新規動物モデルの確立するために、先行研究を参考にした並体結合マウスを作製した。今後はこれまで得られた結果を基に、ARDS発症後のマウス脳機能への影響を組織学的、行動学的に解析する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画に沿って、初年度の研究は遂行できており順調に進んでいる。ARDSマウス及び並体結合マウスモデルをそれぞれ確立することができた。また、血漿、BALF、肺組織中における、ARDS発症後のIL-17及び各種サイトカインの発現レベルの変化を確認することができた。
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今後の研究の推進方策 |
ARDS後のIL-17の発現は、特に超急性期に増加することを明らかにした。そこで、ARDS発症に伴うサイトカインストームに曝露されたマウスの脳の組織異常を、超急性期において検討する。血液脳関門の機能解析や脳浮腫の状態確認、神経細胞やアストロサイト、ミクログリア等の細胞数や形態変化を組織学的に調べる。さらに、サイトカインストーム曝露後から1か月後まで、水迷路テスト等により認知機能に関する行動学的異常を検証する。そして、IL-17シグナル阻害がサイトカインストーム曝露後の血液脳関門に及ぼす影響を調べるため、遺伝子改変マウスまたは抗IL-17抗体を投与して行動や脳構造の変化を解析する。また、これらの実験は、ARDS発症及び健常マウスの並体結合を利用した血液成分の共有による新規モデル動物においても検証し、サイトカインストームに曝露された健常マウスの脳機能の解析を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
購入予定の試薬の納期が遅れたため、未使用額が生じた。また、新型コロナ感染症の拡大により、参加予定の学会がWeb開催となったため、未使用の旅費が生じた。未使用額は、次年度の物品購入と学会発表に必要な経費に充てる予定である。
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